第28話 訓練
ㅤ訓練用エネミーは猪型、エーテル・オルゴンで再現された特殊なマテリアル複製体だが、かつて人類と対峙した神秘種の特性を忠実に再現している。
(エネミーの総数は15体、8分以内に襲ってくる全てを消滅させなくてはならない。
ㅤ地上戦だが、こちらの後方や死角へ素早く回り込んでくる)
ㅤつい凝視してしまうが連日の酷使もあってまた眼精疲労ぎみ、マクロな戦局を見届けたら、なるべくまばたきを挟む。
「無理しないでね、飴川くん」
「大丈夫、馴れてないだけだから。
ㅤ俺たちの番が来たら、俺は目を閉じて対応するけど、それを承知で連携してくれないか」
「ごめん、意図がよくわからない」
「聴覚や気配で俺はエネミーを拾うから、念のため位置関係を分かり易くしたいんだ」
「なるほど、できるの?」
「一人のときはそうやって対処してきた、ただ集中すると短時間しか魂魄鎧を展開できなくなるから実技はこれまで避けてた、その後周りに迷惑をかけちゃうからな――エネミーが出たら、速攻でケリをつける必要がある」
「わかった」
ㅤそれはそうと、御子柴組の活躍だ。
「
「
ㅤ貝原さんは双剣マテリアルから両手首にかけて、紐状の手甲を形成し腕力を補強する。
ㅤ御子柴くんのクロスボウは一度に投射できるマテリアル矢の本数が増えた。
(貝原さんは紐状の拘束具を身体強化の依り代にできるのか、興味深い。
ㅤかたや御子柴くんの矢、分化すると矢の性能や耐久力はどうなるんだろうか?
ㅤあとで聞いてみよう)
「貝原さんは凄いな、武装マテリアルと身体強化の並立ってだけでも、学年で上位に食い込むだろう」
「ふーん……ま確かにそうだけど。女の子のことよく褒めるんだね」
「?」
ㅤあんずのジト目の意味を雫は測りあぐねる。
ㅤなぜか向こうにいる葡萄からも睨まれた気がするが、あいつはなおのこと知らん。
ㅤと思っていたら、すでに彼女のバディの番が回ってきた。
「
ㅤこの前はロングバレルのライフルだったが、速射性と取り回しを優先したハンドガンの形をとっている。
「葡萄っち、二丁拳銃スタイルなんだ」「この前見たのとは違うな」
「この前って?」「あ、いやなんでもない」
ㅤ流石に踊り場で殺されかけた件を知られると、誰も幸せにならないだろう。
「確か銃器はマテリアルでの再現が難しいんだっけ」
「火薬の代わりに弾体を射出するための起爆に用いるエーテル・オルゴンの微細な調整と、それに耐用する砲身を維持できなきゃならないんだから、あれは難易度が桁外れだね。
ㅤ私や貝原さんあたりでも、あれはすっかりお手上げというか、難易度の割にあってるかは知らないけど」
「へぇ、あいつもなんだかんだで凄いんだよな、そういえば」
ㅤ雫は素直に関心した。
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