第27話 半端もの

ㅤ雫&あんず以外のみなはやけに緊張感がまとっている。


「そういや関東校交流戦選抜の直前だったか。

ㅤ道理でみんな、実技に気合いが入ってるな」

「飴川くん、交流戦に興味があるの?」

「話題くらいは聞いてるし、誰か同士が競い合って磨き合うとか、これまでの俺にはできないことだったから、素直にみんな尊敬してる。意欲はさておき、みんなと競うだけの才能や資格があるかは別問題だけどな――そういう半端ものがやっかまれるのも、わかってる」

「そんなの、私たちで見返してやろうよ。今すぐは無理かもだけど、飴川くんならきっとできると想う。

ㅤやろうよ、一緒に」

「あ、あぁ。ありがとう」


ㅤそんなにも強気のフォローが入るとは思っていなくて、雫は軽くびっくりした。


「とかいいつつ、葡萄ちゃんのことさっきから見てない?」

「え、坪内……さんが?」

「ほほぅ呼び捨てにする程度の仲だと、もしかして好きなの、付き合ってて?」

「いやいや、ないだろ。授業中だぞ、気を散らしていいのか」

「真面目かよーい」


ㅤ今ひとつあんずのノリが掴めない。ただ、不快な感じはしなかった。

ㅤすでに模擬戦を開始している、最初のペアへ目をやる。


「御子柴くんと貝原さんか」

「貝原さんが双剣、御子柴くんがライトボウガンで前衛と後衛」

「男女逆では?

ㅤ魂魄鎧の性能は形状とイコールじゃないとはいえ」

「そりゃみんな、能力の相性に適した形にするでしょうよ。

ㅤ意外と古典的な男らしさとか、気にしてるんだ」

「あーそれ言われると手痛いな、俺自身に戦闘力があるでもないのに、他人に理想を押し付けるなんて軽率だった、すまん」

「誰だってあることだよ」

「これからは気をつける」

「ところで飴川くんの魂魄鎧って、いつも展開してるんでしょう?

ㅤ知覚系の魂魄鎧を長時間安定して制御できるの、凄いと想うけど」

「そうしないと生きてけなかったから。

ㅤそれに普通のみんなと違って武器化とか、オブジェクトとしての具象化がろくにできていない。

ㅤ知っての通り、魂魄鎧は万物に宿るエーテルからエーテル・オルゴンを『精製』し、それを生物の体内へ『蓄積』する技術だ。

ㅤ精製の練度と蓄積の総量に比例してできることの幅が広がる、もっとも生まれついての適性は個人じゃどうしようもないんだし」


(人を喰らってようやくエーテルの結晶化、体表にオブジェクトを顕現させる程度はできるようになったが、武器化はできないし)


「知覚系魂魄鎧とはいえ、オブジェクト化できないとほら、ろくな成績取れないだろ」

「魂魄鎧が道具ツールであること。それが他の動物や神秘種と、人間との線引きだからね」

「――」


ㅤ口ぶりの意味深ぶりからして、案外彼女は俺が人外であることを勘づいているのかもしれない。

ㅤ葡萄と話しているときより気が楽で、つい饒舌になってしまうが、俺が人殺しの妖精だと知ってなお、彼女はまだ親切にしてくれるんだろうか?

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