第26話 実技

ㅤ翌日はエーテル・オルゴン制御の実習だった。


「これまでは免除されていたが、視力が快復した飴川くんも実技へ加わることになった。

ㅤせいぜい皆の足を引っ張らないように」「――」


ㅤマジかよと、クラスの男子らのやっかみが聞こえる。

ㅤ雫はろくでもない担当教員を、次のドロップのターゲットに定めた。

ㅤそれはさておき、次の指示が問題だ。


「男女混合、バディを組んでの模擬戦だ。奇数だから余ったやつには一人で二人分の訓練エネミーに対処してもらう」

「なっ」「どうした飴川、不服か?」


ㅤ教員は身体的ハンデを引きずった雫が浮くのは自明とばかりにせせら笑う。


「……いいえ」


ㅤ実技恒例の『二人一組になって~』を喰らうとは、容赦ねぇよな先公?


「八つの訓練場に五組づつを分担する」


ㅤクラスの人数は39人、早速みながバラけている。

(早く動かないと、男女混合ってことは)

ㅤむろん坪内葡萄へ声を掛けるのはすぐ考えたが、


「坪内さん、僕と組まないか?」「喜んで」


ㅤあっさり別の男子生徒とペアを組んで、こちらに勝ち誇ったような視線を寄越す。

(人様の前ではなんだかんだ繕えるんだよな、ほんといい性格してる。

ㅤ俺に対してアレなのは、結局は神秘種だからか)

ㅤ紫のドロップの効力を用いれば、無理やりでも言うことを聞かせられるだろうけど、それをやるとここには知覚系魂魄鎧の持ち主などほかにもごろごろいるので、必ずなにかしら勘づかれるだろう。

ㅤ今はよくても長期的にはよろしくない。


「あくまで訓練、授業の一環、出席数さえ稼げればそれでもマシか――」

「飴川くん」

「ええと、浅木さんだっけ」「憶えててくれたんだ、私とペア組んでくれる?」

「え、いいのかい、俺と組むって……その、なかば成績を諦めるようなものだと想うけど」

「そこはほれ、それこそ『足を引っ張らないように』、きみがエスコートしてくれれば済む話でしょう」

「……そうわかった、俺にできる努力はしよう」


ㅤ四の五の言ってても仕方ないので、雫も腹を括ることにした。

ㅤすると最後に誰が一人残るのかと気になったが、確認する間もなく訓練場を振り分けられた。

ㅤ第八訓練場には坪内ペアもやってきており、五組が制限時間ごとのローテーションされる。


「まずは先の三組から、そのお手並みを拝見といこう」

「浅木さんは、余裕で構えているね。俺は緊張し通しなんだけど。

ㅤせめて魂魄鎧の手札は、俺たちも事前に擦り合わせておこうか」

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