第15話 癒着

ㅤそれからはちょっとした世間話になる。


「どうにも組の関係者?

ㅤみたいのが警察と裏でつるんで、金持って逃げたって三人の行方と手掛かりを追ってるらしい」

「へぇ、そんな情報どうやって仕入れてるんだよ」


ㅤよくぞ聞いてくれたと云わんばかり、乙倉が胸を張った。


「こう見えて色々コネクションはあるんだよ」

「あまり褒められたコネには見えんが」

「俺が話したってこと、なるべくオフレコで頼むよ?

ㅤ何もしてないうちから、警察に疑われたくないし」

「わかってるよ……にしてもその話が本当だとしたら、今どきの警察もたるんでるな。

ㅤ無論、そういうことでかろうじて均衡の保たれる界隈ってのは昔からあるわけだけど、組との癒着かぁ」


ㅤ学生崩れで魂魄鎧を扱える用心棒なんてのも、世情に疎い雫の耳にさえ入ってくる。

ㅤこの街の治安が著しく悪いというより、魂魄鎧を持つ異能者たちにより、そのような一触即発物騒な均衡の世相が今日までかけて確立してしまったというそれだけの話なのだが。

(にしてもあの三人、組の金に手をつけたからあんなに浮かれてたわけか。

ㅤそもそも表に出しちゃダメなのはこれで確定だから、あの茶封筒の中身は遠慮なく使わせてもらおう)

ㅤ現場から財布ととも回収したあれは、袋を注意深く調べたが発信機や魂魄鎧による仕込みの類も見受けなかったし、あとは紙幣の記番号を注意して、公共の機関でゆるゆる溶かしてマネーロンダリングの真似事だ。無論一部はすでに電子化してある。あれだけあれば、奨学金がなくても殆どの学費として回せてお釣りがくるぐらい。

ㅤ不審がられるのをわかっているから、大金はなるべく動かさないようにしているものの、汚い金に足のつかない使い方があるなら全力で片っ端から試していこう。

ㅤあとは隠した予算の資金繰りを――、


「楽しそうだな、飴川」

「そりゃ普段からオラついてる悪い連中が痛い目見てれば楽しくないわけないし。

ㅤあいつらには何度か煮え湯飲まされてるからな」

「やっぱりそうか、あーいう底辺には堕ちたくないもんだな」

「底辺だとかはどうでもいいけど、まだ事件ってほどでもないだろうによく刑事が動いたね 」

「どうにも組の若頭経由して、催促があったらしい。

ㅤ連中からしても、上層部の汚職の証拠だから、各セクションなんとしても押さえたいとくる。

ㅤただ最近、港湾内の埠頭で殺人があったろ?

ㅤその件もあって所轄ではすっかり後回しになっているらしい」

「反社もサツも大変だな」


ㅤ言いながらの雫の破顔しそうな笑顔に、鼈甲は怪訝とする。葡萄は呆れていた。

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