第13話 オムライス(貧乏性)
ㅤわりに取り分けたオムライスは好評であった。
「素直に冷凍のチキンライスを買ってこさせず、ケチャップから残り飯に手を加える貧乏性以外は文句ないですよ、さすがに手間かけてるだけあるってことです?
ㅤもっとお金にゆとりのあるほうが自炊は楽しいと思いますよ」
「うん、不味くなかっただけよかったよ。お前にはもうやらん」
「えー」
ㅤ食べたいのか食べたくないのか、どっちかにしろよ。めんどくさいリアクションをしてくれる。
「つーかお前、俺や神秘種の混血が嫌いなんじゃないのかよ」
「なにを言ってるの?」
ㅤ彼女はきょとんとしていた。
「いやこっちが聞きたいんだが、流石に殺されかけての昨日今日で、緊張しないのは無理があるだろう」
「あぁ、そういうこと。
ㅤぶっちゃけ神秘種だろうが生きてようが死んでようが、因子さえ採れればそれでいいのよね。
ㅤ結果死んでも、人間の社会へ擬態しているあんたたちのが『間違っている』だけなんだから」
「混血は人間じゃないと」
「そう言ってる、あなたに至っては自分の生まれを聞いて、まだ人間のフリをして、愚かしいというか」
「お前マジで人をムカつかせる物言いしかできねぇわけ」
「でもそんな私を酔わせて侍らせたのが、あんたなんでしょう?
ㅤ自信持ったら、私これでも優秀で可愛いで通ってるんだから」
ㅤもはや丁寧語ですらなくなっている。慇懃無礼ってのはこういう女を言うんだろう。
ㅤあぁでも、葡萄の花言葉って――『陶酔』か。ほかにもいくつか意味はあったが、彼女自身の境遇にかけてそう言っているのなら、妙にしっくりくるのがなんかまた腹立ってきたな。
(そもそも逆らえないなら、紫の
ㅤ本当に試してやろうかな、というかなんでこいつをここまで生かしてボロクソ言われてんのに飯作ってんだ俺は?)
「お前のそれが可愛いで許される世界とか、ないだろ」
「そこまで言います?」
「自分がここまでいくつライン超え発言重ねてると?
ㅤ三歩歩いて忘れる程度の鳥頭だから、俺相手に遅れをとるんだろうが」
「ほぅ……言ってくれるじゃない」
ㅤ寧ろここまで俺はよく耐えているんじゃないだろうか。情報を引き出そうというぎりぎりの理性から、彼女を殺さない理由を見繕ってるのは温情でしかないと想う。彼女が異性でなく、同性の野郎だったとしてもそうしたか?ㅤしただろうな。ただし顔が良くなければ、飯に文句つけられた時点でもう殺していたはずだ。
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