第二部 クラスマッチ編
心が変われば...
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
運命が変われば人生が変わる。
誰もが一度は耳にしたことのある名言。ウィリアムなんちゃらさんというアメリカの哲学者の言葉だったり、ヒンドゥー教のガンジーの言葉だったり、マザーテレサだったり、いろいろな偉人がこの言葉を使う。
また、先人達の言葉から、数々の偉人がそれを体言し、伝えていく。まさに体言者たち。
体言者……俺もまさにそうなのだろう。俺はこの言葉の何合目まで来ているだろう……まぁ、悪いほうの意味ではあるがな。
常に嫌われムーブしている俺はソロプレイヤーとしての地位を確立し、クラスで一番の自由人であり、嫌われ者……成功者たちの逆をいく破滅路線を辿っていると言っても過言ではなかった。
そのはずだった……逆ガンジーして孤独に生きていく予定だった。
何合目で変わったのだろう。いや、きっと一合目まで突き落とされたのだ。
彼女たちは今も入れ替わりをしている。それを知ってるのは俺だけだ。
「ユ、ユキタカくん……クラスマッチは、ど、どうすると?」
「俺は不参加かな。あれから一か月で実はかなり動けるが、足を引っ張りたくないしな」
(というか、セカン。ユキタカ呼びに慣れてなさすぎて、あやめ感が漏れ出してるぞ)
そっと耳打ちするように告げる。
「フヒャ〜!!」
セカンの奇声でクラスメイトが訝しんでいる。きっと俺がまたセクハラまがいなことをしているなんて思われているのだろう。
「――!どうした
(だ、だって、デクの息が耳に……)
(ここは教室だから、大きな声は出せないだろ?)
(息せんで!)
(お前、めちゃくちゃ言うなよ、ウィスパーボイスは呼吸が大事なんだぞ!)
(ぷっ!何それ……何ボイス?)
(ハァ、これだから無知セカンは……)
「ハァ〜!?なんて〜!」
「――お!お前……落ち着け!」
興奮したセカンの声が教室に響く。「また、八蓮花さんを怒らせてる」「最近よく一緒にいるよね」「どうしてアイツがモテるんだ……」「あれってモテてるってこと?」「知らんけど、超絶美人の彼女がいるらしいやん」「
女ったらし……新しい称号は不本意だ。これはソロプレイヤーらしからぬ称号、つばきとの蒼穹祭デートがここまで尾を引くとは……恐るべし八蓮花つばき。
(ご、ごめん……デク)
(俺はいいが、麗しきミス青蘭のキャラが崩壊してるぞ。気をつけないとバレる)
(う、うん、頑張る)
(クク……まぁ、何かあっても俺がなんとかするし、自然体でいたほうが案外バレないかもな。意識するほうがぎこちない)
(そっか、ありがとう。でね、今日さぁ……一緒に帰れる?)
(またか?お前入れ替わるたびに俺と帰ってるぞ。つばきなんて、ちゃんと友達と帰ってるし)
(だって……デクが一番安心するし……)
うっ……コイツ……自覚はあるのか?セカンの子犬のような表情が俺の庇護欲をかき立てる。お前に友達宣言された俺としては早くこの気持ちを断ち切りたいんだがなぁ……ふぅ……仕方がない。
(どこか行きたいのか?)
(へへ……別にない)
くっ……可愛いな……シャーマンキングにクラスアップしてもなお、
「コソコソ話かい、相変わらず仲がいいね」
「あっ……神代くん、お疲れ様です」
「うん、お疲れ」
「八蓮花からクラスマッチについて説得されてたところだ。俺は出場しないと言ってるんだが、どうもコイツは俺の活躍が見たいらしい。まったく、モテる男はツラい。だろ?神代」
「――!なな、何言っとうと!デ……ユ、ユキタカくんは怪我しとうけん、出場が出来ないちゃろ!わたし知っとうとよ!心配しとるのに……わたし……ユキタカくんに無理してほしくないと!」
「「「――!」!」!」
――!これはさすがにやり過ぎたか?新称号である女ったらしを利用し、セカンがそれを否定して、上手く勘違い男として称号を勝ち取り、女ったらしという最悪な称号を剥奪してもらおうと思ったが……セカンが方言連発で健気で可愛い女の子をモロ出しにしてしまった。
どう見ても「麗しきミス青蘭」には見えない……。
クラス中の男子……いや女子もこの可愛いさにあてられて放心状態だ!
「そ、そうか……悪いな八蓮花……とにかく落ち着こう」
「あ……ごめん……なさい!わたし、興奮して喋り方が変じゃなかった……!?」
その場でジタバタとしているセカン。その慌てた様子はランニングマンさながらのステップで俺に詰め寄る。
いや……可愛いかよ。もう、それ以上あやめを出すな。つばき以上のポテンシャルを感じる……。
ドッと沸き立つ教室内!静まり返っていた教室内は息を吹き返した。「可愛い〜八蓮花さん!」「あんなこと言われたら3日寝込むわ」「尊い〜」「八蓮花さんが健気すぎて泣けてきた」「守日出って悪魔だろ」「アイツがモテて俺がモテてない件」「悪魔から八蓮花さんを守ろうよ!」
おぉ!女ったらしから悪魔へと進化した。グッジョブだセカン!
盛大に盛り上がるなか、神代が口火を切った。
「守日出……クラスマッチのリーダーになってくれないか?」
「断る」
俺は即答した。
神代の思わぬ発言にざわつく教室内は、俺と神代の会話を固唾を呑んで見守っている。
「君はクラスマッチ競技には出ない……それは分かっている。だけど僕は競技や役員で忙しいんだ。だから、クラスのためにも引っ張ってほしい!体育の貴重な評定につながるし、今後の受験にもきっと優位に働くと思うよ」
「……だが断る!」
岸部露伴ばりに断った。
「頼む!サポートはするから!」
俺に頭を下げる神代……ここで断れば満を持して俺はソロプレイヤーとしての道を確実のものとするだろう。ゴクリと生唾を飲み込み、いざ盛大に断りを入れようとしたとき………………セカンが悲しそうな目で俺を見ていた。
ふぅ……そんな顔をするな……。
「わかった……引き受けるから、頭を上げてくれ」
俺は観念した……。
照明の反射で光るセカンの瞳は、目尻に浮かんだ涙でキラキラと輝き……破顔したその顔を見ると、胸が少し熱くなっているのを感じた。
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