わたしの好きな人
♦︎♢♦︎♢♦︎♢八蓮花あやめside ♦︎♢♦︎♢♦︎♢
目を覚ますとデクの楽しそうな声がする。
すぐには起き上がらずに、ぼんやりと開けた目は再び閉じて、耳だけで二人の様子を窺う。
冷静になると恥ずかしく顔も見れない……。
デクが気を失ったとき……わたしは頭が真っ白になり、覆いかぶさった彼を……なぜか抱きしめていた。
うぅ、恥ずかしくて死ねる。なんてことをしてくれたんだ、あの時のわたし……デクに意識が無かったことが唯一の救いだ。
抱きしめた彼の背中が熱くて慌てて服を脱がすという奇行。いや、奇行じゃないよね?これは必要な行動だった……と思う。あの内出血した背中の青あざを確認するためにしたことだからやましい気持ちなんて無い……無いけど恥ずかしい。
頭が真っ白になってたから出来たんだと思う。だって、今思えば男の子の身体に触れるのも初めてなのに、その背中の上で号泣するなんて……うぅ……しかも、そんな姿を岩国先生に目撃されるという大失態!
デクが知ったら、このバカセカン!って言われる……。
でも……それでも、そんな彼の声が聞きたい。彼の元気そうな声を聞けて安心する。良かった……。
元気に喋っているから打ち身だったのかな?……病院とか行かなくていいのかな?わたしを待ってるんだったら起きたほうがいいのかな?でも、声を聞いていたい……そんな気持ちになる。
「ジョジョの至高は第5部だろ?」
「えぇ?第4部じゃないんですか?」
「かぁ〜分かってないねぇ!第4部が良いって言ってるヤツは大抵キングクリムゾンの能力を理解しきれてねぇヤツだ!」
「いやいや、仗助の「治す」能力だけで、あそこまで応用の利いた戦い方をするところがいいんじゃないですか!それこそ至高でしょ!」
「そうか?」
「そうですよ。ジョルジョは最後チート過ぎます」
「おぉ、言うねぇ。やるじゃん守日出!ムフフ」
「いえいえ、岩国先生こそ。噂通りのオタク具合ですね!」
「カカカ、よし、私と不倫するか!」
「遠慮しておきます」
「そう言うなって〜!」
「先生、淫行ってご存知ですか?」
「おいおい、そう言わずにさぁ〜いいだろうぉ〜」
「アンタ、中身完全におっさんだよ……そりゃ旦那に見限られる」
「――!見限られてはないぞ!ただ、相手にしてくれないだけだ……うう……ツラ」
え?岩国先生ってこんな
デクもデクで楽しそうだし!わたしと話すときなんて……最近は……けっこう優しいけど……イジワルだし……こんな高校生みたいな会話しないもん!わたしが合わせられないだけかもしれないけど、こんなに楽しそうじゃない!
デク……どんな顔してるんだろう?
気になる……笑顔かな?そういえば、いつも無表情だから笑顔なんて見たことなくない?
本当はこうやって誰とでも合わせられるのに、クラスメイトとは距離を置いてる。
はっ!もしかして大人の女性が好きなの!?デク、ストップ!岩国先生は既婚者だよ!……あっ、でもそういう
いやいやいや、さすがにないよね。たしかにデクは変人だけど倫理観はあるはず?あるよね?いや、無いかな?
あぁ、もう!どうしてデクのことばかり考えてるの!?ずっと変なヤツだと思ってたのに……嫌なヤツだと思ってたのに!今は……わたしはデクを……。
態度悪いし、口は悪いし、イジワルだし、みんなにキモがられる……目つき悪いし、背が高いし、頭いいし、なんだかんだ優しい……わたしだけを守ってくれる人。
神代くんとケンカみたいになってたけど、あれもきっとわたしのため……実質、興味ないって言われたようなものなのに、そんなわたしの背中を押す。
デクはわたしに興味ないのかな?……って何てこと考えとうと!?バカだ、わたしは……。
バカだよ……。
「っで、いつから付き合ってるんだ。お前たち」
「――は?付き合ってませんよ」
「そうなのか?あれだけべったり密着してたから、私はてっきりそういう関係なのだと思っていたぞ」
ちょちょ、ちょっと何を言っておられるのですか、岩国先生!そそ、そういう関係って何?どういう関係?セクハラ先生が言ってるのはやっぱり、あああ、あの関係ってことだよね!?
あつい、あつい!顔が熱い!今は絶対起き上がれない!
「八蓮花には好きなヤツがいるんですよ」
「だから、それが守日出だろ?」
「ハハ、違いますよ。もっといいヤツです」
「お前よりいい男かぁ……うちの旦那くらいしか思いつかんなぁ」
「相手にされてませんけどね」
「――くっ!このモテ男が!調子に乗ってるな」
「モテてませんよ、むしろキモがられて、ウザがられてます」
「少なくとも八蓮花と私にはモテてるぞ」
「八蓮花は違いますって、そして先生はカウントしません」
「ちぃ、このロリコン!」
「アンタがね」
「だが、あれだな。お前は……すすす、好きなのか?八蓮花のことが」
「自分で言っておきながら照れるなよ。あれだけ変態トークを繰り広げておいて、今さら乙女キャラは勘弁してください」
「いや〜、青春の「好き」はなんかね〜!甘酸っぱくて照れるだろ?……っでどうなんだ……ドキドキ」
「ウザ〜この人」
待って、待って!聞いていいの!?だって盗み聞きみたいで悪いし、胸が苦しいし……ドキドキと胸の鼓動が……デクはわたしのことをどう思ってるの?……なんて答えるの?怖い、聞きたいけど、聞きたくない!ああ、もうムリ!
「言えよぉ〜!言って楽になっちゃえよぉ〜!嫌いではないよなぁ〜」
「ハァ……嫌いなわけないじゃないですか。好きですよ、もちろん……でもそれは恋愛の……」
「かっはぁ〜!もう耐えれん!甘酸っぱい!甘酸っぱいぞぉ!守日出〜!……ご馳走様です」
「はいはい、もうちょっとトーンを落としましょうね。八蓮花が起きますから」
すす、好き!?今、す、好きって?
あれ?なんで?涙が出て……これじゃ起きれないよぉ……わたしはどうして泣いてるのぉ?……つばき……助けてぇ……。
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結局、頃合いをみて起きた。デクと岩国先生のオタトークが落ち着いたので、ここしかないと思ったから。でも起きた瞬間笑われちゃった。
泣きすぎて目が腫れてたから……うう、恥ずかしい。でも、こんな顔のわたしを見て……彼は笑ったのだ……自然な笑顔だった……初めてわたしに向けた笑顔……少年のように無邪気な笑顔、いつも無表情な彼が無防備な笑顔をわたしに向ける。
「笑うな!」と強がって言ってみた。
「今のお前ブサイクだぞ。明日までにはその腫れた目、なんとかしろよ。ククク」
「分かっとうっちゃ!このバカデク!」
「先生、コイツの目見て!」
「ヒドいな……お前が」
「そうっすか?」
「もっと言い方が…………」
「俺は、正直なん……」
「だから……」
「え〜……」
そっか……わたし……デクが好きなんだ。
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