セクハラ変態オタク教師と....

 ハッと目が覚めて慌てて起き上がろうとすると、痛みが全身に響いた。悶絶しつつもなんとか状態を起こした俺は、右手に違和感を感じる。


 セカンが俺の手を握ったまま寝ているのだ……泣き疲れたのか?……まったく……こんなことをすると男はみんな勘違いするぞ。俺でもギリギリだ!


 そう思い「おい、セカン」と声をかける。


「守日出、もう少し寝かせてやってくれ」


 カーテンから顔を覗かせるのは保健室の岩国先生だ。金髪のロングヘアにゆるいウェーブ、美人で謎の多い先生だが一部の生徒に絶大な人気がある。ちなみに既婚者だ。


「岩国先生……戻ってたんですね」


「私はそんなに席を外してないぞ!小一時間ほどだ」


「今、何時ですか?どのくらい経ってます?」

「午後4時だ。2時間くらい寝てたかな。私が来た時はびっくりしたぞ!お前が八蓮花を襲っていたからな」


「――ちょっ!違いますよ。まさか職員に報告してないですよね……」


 セカンを見られるとやっかいだ。


「当たり前だ!私がちょ〜と蒼穹祭を徘徊している間に保健室で淫行が行われてるなんて、あってはならんよ!よってもみ消す」


「いや、もみ消さなくても行われてませんから」


「むっ!だったらどうして上着を脱いでいた!八蓮花は絶世の美女だからな、私の次に!襲いたくなる気持ちも分からんではない!私だったらその繋いだ綺麗な手を……ハァ……ハァ……」


「先生……変態が漏れ出してます。というかこの状況なら八蓮花に事情は聞いてますよね。あえて俺で遊んでません?」


「ちぃ、勘のいいガキは嫌いだよ」


「はいはい、ハガレンですね。変態オタクの岩国牡丹いわくにぼたん先生」


「おぉ!さすが学年2位!うちの旦那は全然漫画を読まないんだよ。オタトークしな〜い?」


「しません。そんなことより俺の背中は先生が?」


「そんなことって……せっかく、名作漫画を知ってるヤツに出会ったのに……相手にしてくれなくて先生は寂しいぞ……淫行についても秘密にしてあげてるのに、そんな態度されたら、さすがの先生だってポロッと言っちゃうかもしれないぞ……脅迫?いや……脅迫ではなくて強制だね……強制的にオタトークをするんだよ。決してハラスメントではなくてだな……日頃から旦那に相手をされない寂しい人妻を、若いエキスで潤して……」


「先生……マジでヤバいですよ。漏れすぎてます」


「は!?すまない……我を忘れていた。それで背中の具合だったかな?知りたいのは……」


「まぁ……先生の分かる範囲でいいですけど」


「ちなみに私が来た時にはお前は上半身裸で、八蓮花がお前の背中で泣いていた」


「――!どうして俺が裸?」


「理由を聞くとだな、まず八蓮花が……いや、勝手に話していいものか……」


「いや、教えてくださいよ!」

「コンプラ的にどうかと思ってだな」

「コンプラ全然大丈夫です」

「う〜ん、いや、やめておこう」


「ハァ……じゃあ怪我の具合は?」

「聞きたいか?」

「はい、お願いします」



「『選手生命にかかわるわよ……』」


「……『もうバスケットはできないってことすか……?』じゃないわ!スラダンはいいから早く教えろ!」


「ウフフ……『白状します……どんどんよくなる君のプレイを見ていたかったからだ……』」


「『俺は今なんだよ!』って言わせるな!思い出して泣けてくるわ!」


「おぉ!守日出〜!心の友よ〜」


「ウザいわ〜、この先生……って抱きつくな!不倫で旦那に殴られる!離せ、このセクハラ変態オタク教師!」


「守日出、真面目な話……背骨、折れてるぞ」


「は?マジで」


「私はもともと整形外科医だからな。コルセットも準備しておくし、激しい運動をしなければ学校生活も問題ない、が定期的にここに通うんだ……グフフ」


「おい、グフフって言っちゃてるけど……病院は行かなくていいんですか?」


「私は天才整形外科医だぞ!見立ては間違っていない!」


「まぁ、とりあえず折り合いみて、セカンドオピニオンしておきますね」


「おい!信用ないなぁ」

「いや、俺の体に抱きついたままだと説得力無いですから」


「いや〜守日出は帰宅部だよな……いい身体してるなぁと思ってだな、決して若い男のスベスベ肌に触れたいわけじゃないぞ!」


「それ、言っちゃうと意識してる感出ちゃうんでやめたほうがいいですよ」


「うん、わざと言ってるんだよ」

「この変態が!」


           |

           |


「蒼穹祭は?」

「まもなく1日目が終わるな。とりあえずお前のことは担任に伝えておこうか?」


「いえ自分で言います。コルセットはいつ出来ます?」

「一週間くらいだな。学校はどうする?」


「明日は約束があるんで登校したいですが、やめたほうがいいなら安静にしておきます」


「ちぃ、モテる男かよ!そりゃそんないい身体してりゃあ女も寄りつくわ!」


「……おっさんかよ」


「ククク……守日出!私はお前を気に入った!コルセットが出来るまで天才的なテーピングしてやるよ!」


「それをすればある程度は動けるんですか?」

「『……ああ、問題ない』」


 岩国先生は、肘を机に立てて両手を組み合わせるポーズでそう答えた。机が無いのでエアテーブルなのが間抜けで、碇ゲンドウであることはスルーしておく。


 セカンがなかなか起きないので、そっと繋いだ右手を外してテーピングをしてもらう。ハァハァハァハァと興奮気味の変態にテーピングをしてもらうと不思議と痛みが減った。どうやら本当に腕はいいようだ。


 結局、全治3か月と言われた。俺の治癒力次第では2か月くらいでは治るだろうとのことだ。なるほど、8月中には完治か……まっ、どうせ予定はないだろう。


 つばきにメールを送る


[転んで怪我したから早退する。明日は登校するが、つばきは来るのか?]


[神代くんに聞きました。保健室に行きたかったけど忙しくて……すみません]


 あぶね〜。たぶん、つばきには内緒で来てるよな。あれだけ挙動不審だったし……つばきに見られてたら、今度は何を要求されるか……。

 

[気にするな]


[ユキタカくんさえ良ければ、一緒にまわってもらってもいいですか……?]


[わかった、予定では午後からフリーだ]


[やったぁ(((o(*゚▽゚*)o)))♡ 楽しみです]


 つばき……メールでハートマークは勘違いしちゃうから気をつけてね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る