3 第1章第2話 不思議な鉛筆

 次の日、ぼくは、鉛筆のことなどすっかり忘れていた。

 


 また、同じ日の繰り返しだ。


「はあー……」

 溜息は出るけど、幸いお母さんはうるさいことは言わない。全部ぼくに任せてくれる。本当は、『勉強しなさい!』って言いたんだと思うけど、決してそんなことは言わない。

 この学校がお休みっていうのは、何か特別なんだと分かっているんだ。


 ただ、ぼくは何をやったらいいのかわからなかった。ただ、今日もまたボ―っと過ごしてしまいそうだ。




 今日も夜になっちゃった。

 周りが暗くなって、ふと夕べの“光る鉛筆”のことを思い出したんだ。


「どこに、片付けたっけ?」


 ぼくは、自分の部屋中を探し回った。なんとか、机の引き出しの中で、三角軸の書き方鉛筆を見つけた。


「これは、昨日の鉛筆かな?」


 ぼくは、少し疑ってしまった。だって、光ってはいなかったし、ひょっとして夕べのことは夢かとも考えたんだ。




 ぼくは、この鉛筆をしばらくじっと見ていた。すると、1年生の担任の先生が教えてくれたことを思い出したんだ。




「えーと、(正しい鉛筆の持ち方は…)親指と人差し指でつまんで、クルリンパ!」




 ぼくが、呪文のような言葉を唱えて鉛筆を一回転させて、右手に正しく持った瞬間、蛍光色の黄色い光が鉛筆から飛び出して来た。まるで、空間に蛍光ペンでラインを無数に引いたようだった。


「わーーー! なんてきれいなんだろう!」


 ぼくは、思わす声に出して叫んじゃった。


「ん?」


 鉛筆から、ぼくの手が離れなくなったんだ。それどころか、目も離せなくなっちゃった。でも、眩しくはなかったんだ。光の線が1本1本見える気がした。そして、あの声がまた聞こえたんだ。





≪……この光の力を使ってね!……大丈夫よ!……待っててね……≫





 ぼくは、その心地よい声に引き込まれて行った。そして、また、深い眠りに落ちてしまった。



(つづく)

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