第48話 例の大学生がクビになったらしい

§


 ご飯を食べ終わって家族とテレビを見ていたら、突然、液晶画面に私の顔が映った。今回の【天王寺アニマルダンジョン】で配信した動画の切り抜きだ。件の大学生4人が、殺人未遂だと世間に騒がれ、大学を除籍になったらしい。


 私たちが未成年だから、テレビカメラも追いかけてくることはないんだけど、代わりに私たちの配信が時々テレビに流れる。宣伝としてはありがたいけど、こんなシリアスなニュースに使われるのは微妙だな。


「お。さくら、久しぶりにテレビに映ってるぜ。」


 兄の健人は気軽に言ってくれる。私はあまりテレビを見てなかったけど、1週間前はもっとすごかったらしい。なんか自分のことじゃない気がして、いまだに気持ちが追いつかない。


「ホントだねー。健人も妹が人気者で鼻が高いでしょ?w」


「まあ、ホントにこの子は!

 私たちがどれだけ心配したと思ってるの?」


「そうだぞ、さくら。

 それに今回のニュースは、なんだこれは?


 また心配かけるようなことをして。」


「しかたがないじゃない。

 私たちだって被害者なんだから。」


「まあね、お母さんもアイドルになりたかった時代があるからね。

 知名度あがると危険だから止めなさい、とは言わないけど。」


「ふふ。その時代って、スマホもダンジョンもなかった時代でしょ?」


「何言ってるのよ。スマホはとっくにあったわよ。」


 うちの両親はなんだかんだ言って理解のある親だと思う。冒険者になりたいって相談したときも、じっくり話し合ったら折れてくれたしね。1週間前にお茶の間を賑わしたときも、人助けしたんだから偉いって、最初に褒めてくれた。その後に、もう心配かけることはしないって約束させられたけど。


 だから言いづらくて今回のことも話してなかったんだけど、バレちゃったな。


 でも、思った以上に反応が薄くてホッとした。向こうは思春期の娘に気遣って表情に出してないのかもだけどね。


「でも実際、お前たちめっちゃ強いよなぁ。

 どうやって強くなったんだ?」


「うん。いろいろ偶然が重なって…運がよかったのよ。」


「へー。そういえば俺の友達にもお前のファンがいるぞ。

 そんなにモテるなら俺も冒険者やろうかな。」


「何言ってるのよ健人。

 せっかく決まった内定が取り消されちゃうよ。」


「ばーか。本気なわけないだろ。

 言ってみただけ。」


「配信はお父さんも見た。

 確かに、娘のあんなにイキイキした顔を見せられたら文句言えんなぁ。

 お前はそうやって、みんなが羨まむことをできてるってことだ。」


「それでも私たちは心配なのよ。

 それは忘れないでね。」


 普段は何も言わないのに、みんな見てくれてるんだな。少し暖かい気持ちになった。


 さて、2・3日ゆっくり休んだし、明日は久しぶりの活動だ!次のダンジョンはどこにしようかな。みんなにリーダーって呼ばれて、ちょっと重圧もあったけど、毎日が充実してる。本当にいい仲間に恵まれたなって、いつも思ってるよ。


 そろそろ寝ようと思って、私は階段を上がった。





☆☆☆


仕事が随分忙しくなってきて、しばらく執筆していません。

今は書き溜めているものがありますが、ストックがなくなれば

しばらくお休みをいただくことになると思います。

 

そうならないようにできるだけがんばりますが。

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