第47話 リリスの揺れない揺れる乙女心

§


 やっぱりお風呂に浸かるのは気持ちがいいな。湯船の中で、私は仲間たちとの楽しい旅行について思い出したりしていた。1人用の湯船もいいが、みんなで入った露天風呂は本当に楽しかった。


 私の両親はカナダ出身で、私が生まれてすぐのころ日本に移住してきた。パパもママも日本文化の大ファンだったらしいが、特に湯船に浸かるという文化がお気に入りだったらしい。幼いころはよく一緒にお風呂に入った。


 だから私もお風呂は大好きだし、できるだけ毎日入りたい。せっかく【クリーン】を覚えたのにもったいないと思われるかもしれないが、そんなことはない。やっぱりお風呂は綺麗なほうが気持ちいいが、掃除が大変だ。【クリーン】を使うことで、あの煩わしさから解放されると思うと、ますます手足が伸びる思いだ。



「おぉい、リリス。

 いつまで長風呂しているんだい?

 もうすぐ夕食の時間だよ。」


 パパの声がする。うちの両親は、2人とも英語教師をしているが、家ではもっぱら日本語を使っている。だから私はあまり英語を話せない。


 「はーい。もう少し待ってね。」


 私は洗面所に出て、バスタオルで身体を拭く。鏡に映った自身の姿を見て、小ぶりな胸部にため息をついた。和泉の胸は大きかったな。さくらや葵も私に比べたら十分な大きさだ。私は細身でスタイルがいいと言われることもあるが、やっぱり大きな胸に憧れる。


 


 「さあご飯を食べよう。」


 パパはお腹を空かせて、食事を待ちわびていたようだ。今日の献立はぶりの照り焼きにほうれん草のおひたし。それからわかめの味噌汁だな。


「今日もママの料理は格別だ。」


 私は照り焼きをほおばりながら、はじかみをかじった。


「あら、嬉しい。

 あなた最近冒険者を始めたって言ってたけど、少し明るくなったんじゃない?」


「そうかな。

 本当に楽しい仲間たちなんだ。」


「あなたがいきいきしてるのが私たちにとっても1番の幸せよ。」


「だが、危険も多いと聞く。

 絶対に無理をしてはいけないぞ。」


「ああ、わかっている。

 2人ともありがとう。」


 これまでの生活に不満があったわけではない。だけど、やっぱり日本人ではないことで、少し寂しさを感じていた。相手に悪気がないのもわかっているが、私に対してはみんなどこか遠慮がちだったからだ。


 そんなとき、さくらが私を冒険に誘ってくれた。不安もあったが本当に嬉しかった。あのメンバーは私を特別扱いしない。なんでもズケズケ言ってくる。まだ短い時間だが、行動を共にすることで、私は彼女たちをかけがえのない仲間だと感じるようになった。


 だから、今の私には不満なんてなにもない。


 次の冒険が楽しみでしかたがないんだ。次はどこに行くのだろうか。どんなモンスターと戦うのだろうか。そしてどんなアイテムが手に入るのだろう。


 本当に、家族にも、友達にも、そして自分自身にも不満なんて1つもないんだ。


 だけど、次の冒険で手に入るアイテムは…



 

 【豊胸の秘薬】とかだったらいいな。





☆☆☆


仕事が随分忙しくなってきて、しばらく執筆していません。

今は書き溜めているものがありますが、ストックがなくなれば

しばらくお休みをいただくことになると思います。

 

そうならないようにできるだけがんばりますが。

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