第45話 葵、デートに出かけます。
§
「お姉ちゃん、いつまで寝てんのー!」
妹の美咲の声に目が覚めた。うちはいつもの癖で、充電してあるスマホを手に取り画面をのぞき込む。小さくため息をつく。ここまでがルーティーン。
「おはよ。美咲。」
階下に降りると、バターの焦げた香りが鼻をくすぐる。トーストとヨーグルトのシンプルな朝食が、私の分も用意されていた。
「いつもありがとうな♡」
「もう。また下着のまま降りてきてぇ。
ていうか、たまにはお姉ちゃんも作ってよ。」
美咲がふくれている。可愛いやっちゃ。じいさんとばあさんは早くに町内の集まりにでかけたらしい。うちの両親は仕事で海外に住んでいるから、今は4人暮らしや。
おとんは私が生まれてすぐに海外赴任が決まり、単身赴任になった。だから数えるくらいしか顔を見たことがない。3年ほど前、おとんの体調がよくないという連絡を受け、おかんもおとんのところへ行くことになった。
うちは学校の友達と別れるのも嫌やったし、そんなに長い期間になると思ってなかったから、じいさんばあさんと住むことにした。美咲も同じや。
「お姉ちゃん。冒険者って楽しいの?」
「ん。今んとこめっちゃ楽しいで♡」
「うちも昨日知ったんやけど、なんか配信がバズって人気者らしいやん。」
「そやねん、そやねん。あんたにもサインあげようか?」
「サインなんかいらんわw
でも、最近始めたばっかりやのにすごいなぁ。」
「ま、いろいろ運が良かったんや。」
うちは美咲が入れてくれたコーヒーを1口飲む。
「んー、美味しい!
そや、可愛い妹にうちからおこづかいをあげよう。」
「え?ホンマ?それはいる。
ありがとー♡」
「現金なやっちゃなw」
「冒険者ってそんなに儲かるん?」
「そらもうガッポガッポやw」
「嘘ばっかりぃw」
ばあさんには、うちらの生活費は十分に送られてきてるらしい。せやけど、久しぶりに子育て始めることになったばあさんが、教育ママをはりきってるからさ。結構厳しくて、おこづかいも少なめなんよな。私らの将来に貯金してくれてるねんて。
今日は美咲と買い物に行く予定やから、その時に5000円あげるって約束をした。
「そうそう。昨日、家の前で亮君にバッタリあったよ。」
「そうなん?元気してた?」
「んー、相変わらず暗かったw」
この亮いうのは、私が幼稚園のときに隣に引っ越ししてきた同い年のやつや。幼馴染いうやつやな。こいつが最近、学校でいじめられてるような節があって心配やねん。酷い暴力とかはなさそうやけど、パシリに使われるのは当たり前。クラスの中でもいじられて、笑いものにされてるって噂や。クラス違うから、詳しくは知らんけど。
うちが心配して聞いても、大丈夫しか言わへんし。おせっかいなラインには返事も返してこやんようになった。昨日も帰ってからライン送ったのにな。美咲に会ったならその報告するとか、返すこといろいろあるやん。
大人しい性格で眼鏡のチビやから、いじめられやすいんかも知らん。
実はうちが冒険者始めたのも、自分が強くなったら、亮を守ったれるかもって漠然と考えたからやねん。でもラインの返事も返ってこやんのに、してあげれることなんかないよな。
「ほな先に着替えたり用意しとくから、お姉ちゃんも時間守ってや!」
「へいへい。了か~い!」
さ、今日は久しぶりに妹とデートや。うちもちゃんとお洒落して、楽しもうかな。冒険もええけど、たまにはゆっくり妹とすごすのもええなぁ。
☆☆☆
仕事が随分忙しくなってきて、しばらく執筆していません。
今は書き溜めているものがありますが、ストックがなくなれば
しばらくお休みをいただくことになると思います。
そうならないようにできるだけがんばりますが。
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