第38話 レベル120だぜ

「私、気づいちゃったんです。」



 実はさっきさ、アイスベアとやりあったときにあいつの頭を触って、見えちゃったんだ。あいつらがアンデットになる瞬間の記憶。


 白熊たちは仲間と岩場でのんびりしていた。急に仲間の1匹が苦しみ始めた。心配して何匹かが集まったけど、そいつらも苦しみ始めた。いつの間にか辺りは霧に覆われていた。毒だって気づいたときには遅く、みんなのたうち回っていた。


 こうして群れは全滅した。死んで間もなく、空にあらわれた大きな魔法陣に、自身の意識が吸い込まれていく感覚を覚えた。これが最期の記憶。


「つまり、アイスベアはアンデッドにする目的のために大量虐殺されたんです。

 そして死因は霧状の毒。

 ってことは…犯人はお兄さんたちですよね?」



<マジか?>

<ぜんぶこいつらが仕組んだってこと?>

<え?ここまで茶番?>


<毒殺ならアンデッドに外傷がなかったのもうなづける>

<腐ってなくて奇麗な状態だったこともな>

<死にたてホヤホヤだったってわけか>


<俺は初めから大学生が怪しいと思ってた>

<イケメンだから?>

<イケメンだから>



「へー、さくらちゃんて死体の記憶とか見えるんだ。

 【巫女】の能力?」


「うふふ。ちょっとバレるのが早かったね。

 そうだよ。ボクたちがやったんだよ。」


「な、なんのためにそんなことをしたのですか?」


「君たちと同じだよ?

 夏休みの暇つぶしw」


「じゃあお前たちは、ガルス兄弟を無実と知った上で殺そうとしていたのか?」


「呼んでないゲストに乱入されて邪魔だったからね。

 それに上手く罪をかぶせたら、その後がやりやすそうだったしw」


「そ、そんな…。

 お兄さんらは、もともとうちらを知ってたん?」


「そりゃ知ってるよ。

 有名人だからね。


 配信も遡って見たよ。

 【空の冠】にはめるオーブを探しているんでしょ?」


「あ!ほな、あのネットの書き込みも?」


「あはは。せいか~い!

 ほら、奈良からの交通とか君たちのランク考えたら、このダンジョンくらいが程良いでしょ?だから、オーブの噂を流して誘導してみた。」


「本当にノコノコやって来た時には上手くいきすぎて笑ったけどね。

 あ、改めまして、私、如月がネクロマンサーだよ。」


「私たちをここへ誘導して何するつもりだったの?」


「あ、レイプとか野蛮なこと考えてる??

 しないよ、そんなこと。


 ナンパ、ナンパ。

 シチュエーションつくって俺たちが声かけたら、JKはその気になるでしょ?」


「後は、自分たちで股開かせて…動画に撮るのもお金になっていいしね。

 ま、夏の思い出作りってやつだよ。」


「最低ですやん…。」


「ふーん。でも葵ちゃん、君が1番まんざらでもなかったんじゃない?」


 藤堂さんがニヤニヤ笑っている。


「な、なに言ってんの?あんたらなんか、なんとも思ってへんわ!」


 葵の眼がしらに涙が光っている。最低な発言だ。あまりの侮辱に悔しすぎるんだろう。それに、少し図星が混じっているなら、残念すぎて自分に腹が立つよね。こいつらだけは許せない!


「ホントに信じられない!

 それでこれからどうするの?

 あなたたちの最低な姿、全部動画に映っちゃってるよ!」


「ほんとにそれw

 どうしようかな。


 君たち、その兄弟の仇うちで僕たちと試合するつもりない?

 あ、その泣いているビッチの仕返しでもいいし。」


「いい加減にしろ!私たちと戦る気か?

 後ろを見せるつもりはない。


 後悔させてやるぞ!」




「お。話が早い。

 じゃあ、とりあえず合意の上で戦おう。


 戦闘中に事故でドローンが壊れることはありえるよね?

それから君たちを教育して。あ、君たちには気持ちの良い思いもさせてあげるね。

それで結果、示談が成立…。


 うん。俺たちワンチャン助かるかもね。」

 



<外道だ…>

<糞キモイ>

<リリィズ、こいつらを許すな!>

<でも…レベル120だぜ?>






☆☆☆


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