第35話 音速パンチといかれポンチ

「なにこれ~??」


 私は思わず声を荒げた。その写真にはなんと、私たち4人が笑顔で写っている。私はそれをその場のみんなに見せた。


「あなたたち、私たちに近づいた目的は何なのですか?」


「もしかして、誰かに依頼を受けた暗殺者か何かか?」

 

「いや、ちょっと待て。

 違う違う。」


 兄のガルスが弁明をしようとする。私たちは身を固くして身構えた。大学生のお兄さんたちは、空気を察して私たちと兄弟の間に割り込んでくれた。


「お前たち、見るからに怪しかったんだ。

 誰から依頼を受けたのか正直に言え!」



<何この兄弟?>

<ドン引き>

<てかリリィズ大丈夫??>


<お兄さんたちがいるから大丈夫>

<やっぱお兄さんたち頼りになるな>

<悔しいけど今はリリィズを守ってくれ>



「ちっ!わかったよ。

 もういい。行くぞファング!」


「おう。了解だ兄貴。」



 ガルス兄弟はくるりと踵を返してその場を去ろうとする。やっぱり信用しないでよかった。彼らが去ろうとしたので私はホッとした。


「おい!待てよ!

 話は終わっていないぞ!」


 お兄さんたちが兄弟を呼び止める。


「あ、あの。もういいから帰ってもらったほうが…。」


「甘いよ、さくらちゃん。

 こんな怪しい奴らをこのまま帰したら安心して眠れない。」


 藤堂さんは兄弟の行く手に回り込んだ。


「なんだてめえ!

 どけよ!」


 ファングが藤堂さんの肩を押しのける。


「やったな?お前?

 これで正当防衛だな!」


 藤堂さんはいきなりファングの顔面を殴った。攻撃が速すぎて、殴られたファングは反応できない。まるで音速パンチだ。藤堂さんは多分、魔導士系だと思うんだけど、さすがのレベル差だな。


 だけどファングもダメージを受けた感じはない。ニヤッと笑って舌なめずりをした。そして、ノーモーションでパンチを繰り出す。軽く打った割りには威力がすごそうだ。風圧が私にまで届いた。


 藤堂さんはそのパンチをギリギリで避け、バランスを崩して飛び下がる。


「上等だよ。この化け物ども!」


 チッと舌打ちをして、完全に臨戦態勢だ。残りのお兄さんたちも藤堂さんの元に駆け寄り、戦うつもりらしい。さすがに人間同士でこれはやりすぎだ。


「ちょっと、やりすぎです。

 やめてください!」


<なぜ止める?>

<これはお兄さんたちが正しいだろ>

<化け物をかばう必要ある?>


<てか対人戦見たい>

<ワクワクが止まらん>

<やっちまえ!>



 え?私が甘いのかな。だけど人間同士で喧嘩して、怪我したり誰かが不幸なことになったらどうするの??

 別に兄弟に何かされたわけでもないし、やっぱりやり合う意味が分からない!



「さくらちゃんたち、心配しないで。

 僕たちが負けることはないから。」


「そうだよ。

 こんな化け物たち、瞬殺してあげるね。」


「いや、あの、そういうことじゃ…。」


「後悔するんじゃねえぞ、糞野郎ども!」



 どっちもヒートアップして止められそうにない。どうしよう??






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