第30話 リリィズの現在地
さあアニマルダンジョンに着いたよ。ダンジョン攻略を始める前のワクワク感とか不安って、なかなか慣れないね。特に今回はⅮランクダンジョン。プロの冒険者の多くは、このランクのダンジョンで仕事をしていると言われている。
<今日も楽しみにしてるよ>
<気をつけてね>
<リリィズ可愛い!>
<Ⅾランクダンジョンからはホントに広くなるからね>
<可愛いな>
<テレビで見てファンになりました>
チャットの流れるスピード今までと全然違う。本当にたくさんの人が応援してくれてるんだ。
「ほな、みんな。応援よろしく頼むでぇ!」
うん。今日も快調。それにしてもダンジョンの中ってどうなってるんだろうな。私たちは魔力を広げてエリアをつくる。この1階層だけでも50㎞四方はある。つまり、大阪そのものの面積より広いんだよね。
<そうなの?>
<確かに不思議>
<いやダンジョンの常識だろ>
<そんな広いのが20階層って…>
<別にダンジョンは大阪の中にあるわけじゃない>
<そうそう。入り口がそこにあるだけで、それ以外は謎の空間だからね>
私たちだって一応学校の授業も受けてるし、そのくらいは知識として知っている。だけど実際に足を踏み入れて体感してみたら、やっぱり感じ方が全然違うんだよ。
そんなやり取りをしながらも、はたから見たら超スピードで走っている。セレーネは少し大きくなったけど、まだまだこのスピードにはついて来れないので、今回もやっぱり和泉の肩の上にいる。
地下2階への階段はすでに見つけた。だけど、レベルが足りてないのは不安だから、通り道にいるモンスターは極力倒しながら進もうと思う。
前方に目標物が見えてきた。シャドウパンサーの群れ。10匹くらいだね。
<近くで見たらクロヒョウより大きいよ!>
<それに素早いから気をつけて>
<喉に噛みつかれた冒険者の動画、一時期出回ってたよな>
<さすがに油断できないランクになってきた>
<生命の危険があるダンジョンだからな>
<可愛いよリリィズ>
「みんな心配ありがとうございますぅ。」
「でも安心してくれ。」
私たちは少し離れたところから【風刃】をいくつか飛ばした。それらはことごとくシャドウパンサーの首元に命中し、その首を奇麗に飛ばした。
<え?>
<マジ?>
<リリィズってこんなに強いの?>
<なんか初心者冒険者って聞いたけど>
<キャリアとレベルが釣り合ってないのに、実力がさらにレベルと釣り合ってない>
<瞬殺ってこれだな>
「さあ、次はこっちだよ!」
「このシルエットはラット…いや、ブラッディラットやな」
<どこ?>
<ブラッディラット?>
<どこ?>
<初心者おつ>
<リリィズの進む先にいるんだよ>
<妄想??>
「さあ、ちょっとこの群れは数が多いから気をつけようね!」
<いた!>
<ホントにラットがいた>
<え?見えてたってこと?>
ブラッディラットは大家族だ。1匹1匹のサイズは小さいけど、素早いし連携が見事だ。歯の鋭さや咬合力はラットの比ではない。しかもこの群れ、30匹はいるかな。
私たちは心眼と縮地を使い、1匹1匹を丁寧に仕留めていく。
<なに?この戦い?>
<速すぎてほとんど見えない>
<ブラッディラットの死骸だけが積みあがっていく>
<Aランカーでもここまで鮮やかにはいかんやろ>
<この動きは古参の俺たちも脱帽>
<また強くなった?>
私たちはほとんど足を止めることなく階段に辿り着いた。
「どうだ!私たちの剣技は?」
リリスの爽やかな笑顔がアップでカメラに映る。
今日の決めポーズはリリスに取られちゃったな。
☆☆☆
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