第29話 オーブの在り処

「みんな、遅れてごめーん!」


「リーダーが遅刻なんて気が緩んでるんちゃうか?」


「ふふふ。5分も遅れてないですよ。」


「うん。私たちも今来たばかりだ。」


 昨日は1日オフにして、改めて今日、スタックスに集合した。夏休みの宿題もあるし、毎日ダンジョンってわけにもいかないよね。


「家を出る前にテレビつけたらさ、まだ私たちのこと特集してくれてたよ。」


「見た見た。世の中平和やなぁ。」


「自分がこんなにテレビに出る未来なんて、考えてもなかったですよねぇ。」


「そのおかげだと思うが、チャンネル登録者数が50万人を超えたな。」


「ホントすごいよね。私もびっくりしちゃった。」


「さあ!日本の人気者、【リリィズ】が次に挑むのは、どのダンジョンや?」


 そうそう。今日の議題は、次の目的地だよね。でも、ダンジョンなんて日本中に100個以上あるわけだし、迷っちゃうな。誰か、意見のある人いる?


「あ、私からいいですか?

 昨日、Dちゃんねる見てて、こんな書き込み発見したんです。」


 和泉はそう言って、私たちにURLを転送してくれた。和泉って、ネット掲示板とか見てるんだ。なんかちょっと意外。


「なになに?【天王寺アニマルダンジョン】のクリア報酬が使い方の分からない珠だった?」


「あ、こっちにも同じこと言ってる書き込みあるなぁ。」


「はい。普通に有益なアイテムだったという反論も多いのですが。なかに用途不明の小さな球体をゲットしたという書き込みが3つ4つあるんです。」


「本当だな。しかもすべて情報が新しい。これは信ぴょう性がありそうだ。」


「なるほど。和泉としては、これが【空の冠】にはめるオーブやと疑ってるわけや?」


 確かに!そう考えるとしっくりくるよね。オーブだけ見つかっても、冠を持ってなかったら使い方はわからないだろうし。そうなると次の目的地は【天王寺アニマルダンジョン】か。確か、地下20階まであるDランクダンジョンだったよね。



「今ググったんだけどさ、適性レベルが50だって。私たちのレベルって、こないだ調べてもらったら40くらいだったよね?どうする?」


「適正レベルについては今更やろ。剣聖の力があったら問題ないっていうか、むしろ次の目的地として妥当なんちゃうか?」


「私もそう思う。今はできるだけ強い敵と戦ってみたくてウズウズしているからな。」


「場所だって、ちょうどいいですよね。JRの路線で40分くらいですよ。」


「おっけー!みんながそう言うなら決まりだね。

 でも天王寺ダンジョンは20階層まであるし、1フロアずつが広いから野営の準備はしておいたほうがいいかも。」


「とうとう、ダンジョン内で寝泊まりですか!少し怖いですけどワクワクしますね!」



 私たちは天王寺アニマルダンジョンへの出発を明後日に決め、今日は必要な買い物をすることに決めた。特に、テントや寝袋など野営道具はいいものが欲しいよね。収納魔法があるからかさばってもいいし、できるだけ快適なものを揃えよう!


 私たちの「夏休みの冒険」はここまで順調にきている。毎日がすごく楽しい。アニマルダンジョンで何が起こるのか、まだ知らない私たちは、そんなことを考えていた。








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