第28話 簡単には許さない

 部屋のドアを開けると、玲奈と紗希が立っている。


「どうしたの?2人とも。

 まあ中に入ってよ。」


 とりあえず、ベッドを椅子代わりに腰を下ろしてもらう。


「あの。ごめんなさい!」


 玲奈が口を開く。


「え?なになに?」


「その…、勝負のこと。お金のことなんだけど、実は私たちお金をギリギリしか持っていなくて払えそうにないの!」


「それに、あんたたち、お金たくさんもらってたでしょ?今回は勘弁してよ?ね?」


 紗希が悪びれずに口を挟んだ。



 えー!



 正直さ、お金はどうでもいいけど、そんな態度ってあるかな?



「それは困りましたわねぇ。約束は約束だって、そちらが念を押されましたのに。」


「ぷっ!和泉、実は腹を立ててたんやな。

 それにしても男連中はどないしてん?」


「今は、部屋で待ってる。」


「”情に訴えて、許してもらってこい”とでも言われたのか。」


 2人はうつむき黙ってしまった。たぶんそんなところなのだろう。この2人もこの2人だけど、男たちもどうかしている。なんだかもう馬鹿馬鹿しい。




「なあ、あんたらさあ。さっきから透けて見えるのが気になっててんけど、服の下にえらい派手な水着つけてへん?」


「あ、これは帰る前に、海で遊ぼうって翔太が…。」


 ちょっと嬉しそうに紗希が反応した。


「しっ!」


 玲奈が肘で小突いて黙るよう合図する。



「ほう。うちらへの借金は反故にして、海で男び遊かあ。

 えらい余裕やなぁ。」


「そ、それは…。」



 葵が、ニヤッと笑う。


「ええよ。うちらはお金なんか払ってもらわんでも。

 せやけど10万円は大金や。

 何もなしってわけにはいかへんのと違うか?」


「じゃあ、どうしたら…?」


「あんたらも確か配信しとったな。

 今からコラボしよ。

 クラスメイトとして、お互いのチャンネルで同時中継や。

 せっかくやから、その可愛い水着姿でな♡」


「あら。それはとても素晴らしい案ですね。」


 和泉までニヤッと笑っている。



 ひぃ~!



 2人は顔を見合わせたが、結局は渋々了承した。


 急きょ携帯でカメラを回し生配信が始まる。



<今日はなに?> 

<新メンバー?> 

<なんで2人だけ水着なの?>


<結構可愛くね?>

<そうかな?俺は守備範囲外>

<可愛い♡>



「今日は私たちのクラスメイトと女子会するよー!」

「2人とも冒険者なんですよ。」


「はーい、こんにちは!玲奈ですっ!」

「紗希でーす。私たちはこの4人ほど強くないけどぉ、一生懸命がんばるね♡」



<可愛い>

<花柄の水着たまらん…>

<2人も配信チャンネル持ってるの?>


<意外と愛嬌ある>

<ギャルも悪くない>

<いいね!>



 ちなみに玲奈はいわゆる黒ギャル。

 紗希は白ギャルってやつだ。

 猫を被った2人の笑顔は可愛いし、スタイルも抜群。


 私たちのチャンネルから、ファンを横取りしてやろうって気持ちも透けて見える。


 しばらくして話題が、今回のイベントの佳境、ボス部屋の宝箱にうつる。



「宝箱に入ってたんはこれやねん。」



 じゃーん!



 和泉が【キメラの翼】を取り出す。




「これをどう使うかわかるか?

 答えは… 



 …こうや!」



 葵とリリスがニコニコしながら2人の身体をベッドに押さえつける。



 和泉が【キメラの翼】で2人をくすぐる!



「さあ、約束通り30秒堪えてもらうで!」



<え?>

<え?>

<何??>


<これは…>

<いい予感>

<なに?>



 きゃはははは・・・



 和泉も容赦ない。

 結構きわどいところまで、【キメラの翼】のふさふさを駆使して責め立てる。



「あ。そこは・・・んっ、やりすぎっはぁ。」

「あ。あ。んんんあ。あ・もう止めて~!」


「あかん!まだ20秒や。」


 褐色の肌と、白い肌が絡まるようにベッドで悶えている。

 少し変な気分になる。



「んんん、、くはぁ!ごめんなさいー!」

「ふぁっ、あ、あぁぁぁ!すみませんでしたー!」




<これはたまらん>

<降車駅に着いたが座席から立ち上がれない>

<昔こんなテレビ番組あったな!>


<やば>

<ハアハアハア>

<素晴らしい企画>



「はーい!終了!2人ともよくできましたぁ!」



「はぁはあはあ。」


 2人ともベッドにぐったりしちゃった。



 配信はここで終わり。


 なんだか少し可哀そうだけど私たちはスッキリしちゃったな。私たちはその後少し話して、ちょっとだけ打ち解けた。




「また新学期に学校でね!」


 彼女たちも最後は笑顔で自分たちの部屋へ戻っていった。







☆☆☆


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