第24話 思わぬ大騒ぎ

 関係者たちは色めき立った。先に避難してきた冒険者たちにも怪我をしている人がたくさんいたし、いろんな証言も飛び交っていた。ダンジョンに残された私たちを救助する人材もなかなか確保できず、途方に暮れていたみたい。


 私たちを含めたたくさんの冒険者がダンジョンから出てきた姿に、驚きの声と歓声があがった。私たちは、そんな声の中に悠太たちがいることを視界の隅で確認した。


「悠太たちも避難できてたんだね。」

「あんなんでも、万が一があったら寝覚め悪いからなぁ。」

「はい。本当によかったです。」

「クラスメイトに違いはないしな。」


 ギルドの職員たちがやってきて、冒険者の点呼をとっている。


 幸い命を落としたものはいなかったようだ。


「昨日、シルクウィーバーの魔核を持ち込んだ冒険者は君たちかね。」


 私たちは別室に連れて行かれ、根掘り葉掘り話を聞かれた。そういえばギルドは、森に外来種が出たことを昨日の時点で知っていたよね。危機意識が甘くて、その情報を生かせなかった!なんて責められるかもしれない。対応を間違うと責任問題になりかねないから必死だ。


 私たちは森での出来事を隠すことなく一部始終話した。


「ま、まさか。そんなことが。ダンジョンボスが外来種に取って代わられるなんて話は、聞いたことがない。」


 みなさん半信半疑だったので、デスウィーバ―の魔核を取り出し、ついでに査定に出した。もちろんそれ以外の討伐モンスターの魔核も一緒に提出した。パーティでの同伴義務を怠った私たちの優勝はもうないだろうけど、魔核は買い取ってもらわないとね。


 後はドローンカメラの映像をチェックしてもらったら問題ないと思う。


「あなたたち、本当にありがとうね。」


「姉ちゃんたちは俺の命の恩人だ。」


 広場に戻ると、たくさんの冒険者が私たちを見つけて声をかけてきた。急きょ設置された救護班は、最初に避難してきた冒険者の治療を行い、その数倍の惨状を予想して待機していたらしい。それが、みんな無傷で帰ってきたから驚いていた。


 うん。私たち、ちゃんと回復職として役に立てたね。


「おう。お前ら無事だったのか。」


 私たちを見つけた悠太が近づいてきた。たくさんの人にお礼を言われている私たちを見て、少し不思議そうにしているが、態度は特に変わらない。


「で、お前ら魔核はどのくらい集まったんだ?」


「え?魔核?結構集まったけど…?。」


「は?だから何?

 こんな状態で、まだ勝負にこだわってるの?」


 そんなわけない。聞かれたから答えただけなのに。


「あ、玲奈、安心して。

 私たち、パーティでの同伴義務を守れなかったから多分失格だよ。」


「へー。そうなんだ。

 それは気の毒だけど、勝負は勝負だからなぁ。

 結果発表、楽しみにしてるぜ。」


「へ?」


 悠太、マジ??

 性格悪すぎる…


「まあまあ、しかたがないですよ。

 たくさんの命を救えましたし。」


「そうだ。悔しいけど、負けは負け。

 お金を払うしかないな。」


「はん?あいつら自分らはみんなを見捨てて避難しといて、なんやあの態度。

 こういう時に人間性って出るよなぁ・・・。」


 規則を破ったのは自分たちだし覚悟はしてたけど、やっぱりみんな悔しそう!


 ホントはここで結果発表とか閉会式があり、解散のはずだったんだけど。参加者の健康を経過観察する意味もあって、冒険者はもう1日泊まっていくことになった。

宿泊費は主催者側が出してくれるんだって。







☆☆☆


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