第23話 回復魔法が役立つとき

 私たちはボスを倒して地上に戻ってきた。


赤「さすがに疲れたよね。」


緑「せやな。それにモンスターの魔核はもう十分や。」


黄「少し休憩したら、スタート地点に戻りましょうか。」


黒「うん。それがいい」


 私たちは収納魔法からおやつを取り出して食べ始めた。



<本日2度目のもぐもぐタイム>

<俺たちも何か食べよう>

<DAYONE―>

<それは違うww>

<イーストエン…>


 私たちはおやつを食べ終わって、いつでも出発できる。だけど、セレーネのおやつタイムがなかなか終わらなかった。なにも食べさせなくても大丈夫って聞いてたんだけど、食べることもできるし、しかも食べることが好きみたい。


赤「さあ、そろそろ出発しようか。」


 私たちは、来た道を戻り始めた。エリアを広げて、すぐに異変に気付く。私たちは顔を見合わせてスタート地点に急ぐ。森の浅部に近づくにつれ、空気が重たくなっていくようだ。微かに悲鳴のようなものまで聞こえる。


 セレーネが1番に人を見つけ駆け出した。


黒「あ、あそこだ!」


 リリスが見つめる先には、他の参加者パーティが無残にも倒れていた。近づいてみてぞっとする。木漏れ日に照らされる彼らの様子はまさに地獄絵図だった。シルクウィーバーの糸に絡み取られ、たくさんの冒険者が動けなくなったまま地に伏している。その多くは深い傷を負い、息も絶え絶えだ。



<何だこの光景>

<地獄だ>

<ここまで血の匂いが届いた>

<なにがあったんだ?>

<トラウマになる>



 あたりにはシルクウィーバーの残骸もいくつかは転がっていたが、概ね、人間側が大苦戦をしたみたいだ。


黄「すぐにヒールをかけますね。」


 和泉は目の前の冒険者にヒールをかけ、彼の動きを縛っている糸を切った。冒険者は意識を取り戻した。


「ありがとう。恩に着る。」


緑「困ったときはお互いさまや。それより何があったん?」


「説明に聞いていなかった蜘蛛のモンスターが大量に現れた。

 レベル3上位の手強いモンスターだが、その数がやばかった。」


黒「なるほどな。確かにシルクウィーバーは他のモンスターより強い。」


赤「多分、逃げ延びた人はダンジョンから出たみたいだけど、

  それでも200人くらいは、森で倒れているわね。」


 私たちが手分けして、彼らを救護していくしかない。バラバラに離れちゃったらイベントは失格になっちゃうけど、そんなこと言ってる場合じゃないよね。


赤「みんな!シルクウィーバーもたくさん残っているみたいだから気を付けてね!」


 私たちが回復職だったことが、こんなところで生きるなんて。私たち、冒険を始めたばっかりだけど、剣聖のおかげでずっと格上モンスターを討伐し続けてきた。だから、レベルは爆上がりしている。


 それぞれの回復魔法もかなりの域に達していた。それから2時間くらいかかったかな。怪我人を助けては、シルクウィードを討伐して。回復した人を安全なところへ誘導する。


<なんのドキュメンタリー?>

<野戦病院?>

<まさにそれや!>


<てか、この画像見てると酔ってくる>

<ドローンが困ってるな>

<メンバーどうしの距離があきすぎているんだ>


<これは規約違反>

<イベントも多分失格かな>

<言ってる場合か>



 全員を助け終わったときには、制限時間もずいぶんすぎていたかもしれない。私たちはそんなことを考える余裕もなく、本当にボロボロのドロドロになって、なんとかダンジョンの外に帰ってきた。







☆☆☆


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