第20話 ひと夏の思い出

 お祭りの会場はホテルを出てすぐだった。


 海沿いの道が続き、出店の屋台が並んでいる。



「やっぱお祭りいうたらイカ焼きやなぁ。」


「葵さん、まだ食べるんですか?」


「え?和泉は食べないの?私は…たこ焼き並ぼっと。」


「私はりんご飴というのを1度食べてみたかったんだ。」




「おぉ。お前ら、また会ったな。」


 ホントに会いすぎだよぉ。

 悠太の後ろで玲奈と紗希がこっちを睨んでいる。


「でも君たち、魔核を10個以上集めたんでしょ?

 すごいね。」


「あら。翔太、ありがと。

 お互いがんばろうね。」


「いやいや、お前らなんか、訳の分かんねーモンスターで数を稼いだだけだろ。

 蜘蛛ってなんだよw」


「まあまあ。討伐数で勝負なんだから。

 低レベルモンスターを見つけるのも作戦だよ。

 ね、さくらちゃん。そうだ、今度2人でダンジョン潜ろうよ。」


「はは。考えておくね。」


「うん。戦いかた教えてあげるからねー。」


 さっきから紗希の視線がほんとに痛い。こんな奴、どこがいいんだよ。イケメンの細マッチョってことを除けば、中身スッカスカの遊び人なんだけどね。ホントにこういうの好きな女の子多いなぁ。


「ねえ、あんたたち。別パーティなんだからそろそろいい加減にしてくれない?

 そっちは女ばっかりで惨めなんだろうけど、付きまとわれる身にもなってよね。」


「まあまあ、紗希ちゃん。許してあげなよ。

 じゃあ、さくらちゃん。またLINEして。」



 はぁ。私があなたに何をLINEするのよ…。



 なんか、こういう男許せない!って子もいるけど、別に翔太は悪いことはしていない。女が馬鹿なだけなんだよね。紗希って、人生の映えばっかり気にして幸せになれないタイプなんだろうな。


 1つ言えるのは、翔太はこんな最低な奴だからモテてるんだよ。


 こんな奴だから紗希はプライドが刺激されるんだし、手に入れたいんだし、悲劇のヒロインになれるんだ。もしも翔太が女の望む一途で優しい理想の男なら、紗希はとっくに飽きて、別の男を追いかけてるよ。


 女って、めんどくさい。


 海沿いの道からはだんだんお店が減ってきて、疎らに民家が建っているくらいだ。地元の小学校なんかも見えてきた。お祭りのエリアからは抜けちゃったかな。



「そろそろ戻ろうか。」



 私は足を止め、振り返って3人に提案する。



 その瞬間



「わあ。」



 って、思わず声をあげた。



 空に大きな花が咲いた瞬間だったんだ。



 ひゅ~~~    ドっ! ドンドン!



 少し遅れて音が聞こえる。3人も慌てて振り返る。


 花火は次から次に空を彩り、私たちの顔に明るい笑顔を咲かせた。風に揺れる3人の髪が、花火の光を受けて赤くなったり金色にきらめいたりしている。



「来てよかったねー!」



 感じの悪いあの4人組とは、わかり合うことはないと思う。だけど、それでもあの子たちにとっても、今日が良い思い出の1ページになったらいいな。








☆☆☆


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