第16話 僕たちの失敗

 オークは2mを超す二足歩行の豚だ。言語は通じないが、知能が高いことはわかる。皆、何かしらの武器を持っているし、中には防具をつけているものもある。人間を見かけると、逆上したように襲いかかってくる習性があるので、意思疎通ははかれない。


 私たちにとったら、相性の良い敵じゃないかな。


 パワーで押してくる、愚鈍な剣士タイプだからね。リリスは出会い頭に飛び上がり、オークを袈裟に切り捨てた。革の胸当てごとすっぱりと切れ、遅れて血が噴き出す。



<相変わらずえぐい>

<リリスたんいい!>

<ハアハア…>


<強すぎる>

<容赦ねー!>

<かっこいい!>



 残念ながら、オークは本命ではない。私たちは、このオークの後ろに群生するのがマンイーターの群れだと気づいていた。気配でただの植物ではないことがわかっていたが、こうして近くで見てみると明らかだ。


 巨大な食虫植物のようなそれは、頭頂部に巨大な花弁が開いているが、それがもう大きな口にしか見えない。肉厚の花弁には白い斑点があり、中央には鋭い牙のような突起が並んでいるのだ。これは擬態だと言えるのだろうか…。


 私たちはスライムの沼を焼き払ったように、マンイーターには魔法で攻撃する。手当たり次第に葉や茎を落としておいて、最後は剣だ。間合いを詰めて根の傍の胴をはらう。

 


緑「あれ?ちょっと、これ見てや。」


黄「どうしたの?葵。」



<この2人の絡みドキドキする>

<…わかる>

<実は俺も>



葵は無視して続ける。


緑「この木の根元にあるキノコ、【夜影茸】っていうんやけど。

  これの気配を他と区別して感じることできるか?」


 見ると漆黒に近い紫色をしている親指大のキノコだった。改めて気配を探ると、独特な生命力を感じる。


黒「ん。なんとなくわかると思うぞ。

  それが何だ?」


緑「これは、貴重な薬の原料になるキノコなんや。いつも供給が足りてないから、

 このキノコをたくさん採取したら、助かる人がいっぱいいるんちゃうかなぁ。

 それに、Eランクのモンスターを討伐するより、ずっとお金になるで。」


赤「そうなんだ!困っている人を助けられるなら、今日はモンスター狩りよりキノコ狩りをメインにしようか?」


黒「だが、悠太たちとの勝負はどうなる?」


黄「多分、明日がんばったらなんとかなりますよ。

  悠太さんたちからは、感じるものがありませんでしたし。」


 私たちよりレベルが上の悠太たちだけど、確かに感じるものは何もなかった。彼らは多分、大したことはない。正直、そこまで熱くなる勝負でもないんだよね。


 じゃあ、今日はこの【夜影茸】の採取をメインにしよう!



 私たちは魔力を広げ、夜影茸の位置を探っていく。すぐにたくさんの気配が見つかった。だけど、あまりに疎らでそれぞれの距離が遠い。手分けして採取したいところだけど、メンバーの距離が離れすぎるのは反則だ。失格になってしまう。それに、パーティとして潜った以上、ギルド規約にも違反することになるんだ。


 みんなで一緒に行動するしかない。それでも、今すべきことは夜影茸の採取だと疑っていなかったし、やる気にも満ちていた。だけど私たちには1つだけ誤算があったのだ。



 そんなことは露知らず、私たちは走り続ける。



黒「そっちにはモンスターがいる、こっちへ迂回しよう」


黄「ターゲットはこの崖の上ですか。がんばって登ってみますね。」


緑「今度はあの茂みかい。どうやって川を渡ったらええねん…」



 

<おーい>

<おもしろくねー>

<暇だ…>

<何を見せられてんだー>

<ひま!>

<まくら>

<ラッパ>

<パンツ>

<・・・>

<・・・>



私たちの誤算。



それは配信が、とんでもなく地味な動画になってしまったことだ…







☆☆☆


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