第15話 賢島の積乱雲

 3日後、私たちは近鉄賢島駅に着いた。

 照りつける太陽と遠くの積乱雲。

 夏の暑さが気持ちいい。

 剣聖の身体強化は、環境への抵抗力も強くなるみたいだ。


 少し歩くとイベント会場に着いた。賢島ダンジョンでは今、モンスターが急増中らしい。冒険者がダンジョンに潜る理由の1つに、ダンジョンは放っておいたらモンスターが溢れちゃうってのがあるんだよね。


 今回は、その対策として、自治体がイベントを催して冒険者を集めたみたい。


 賢島ダンジョンはだだっ広い地上階が大森林になっている、これがメイン。後は、小さなボス部屋が地下1階にある。地下への階段は不定期に移動するので厄介なんだけど、今回のイベントには関係ない。



「ダンジョン地上部の大森林で、モンスターの魔石を何個集められるか!

 みなさまには討伐数を競っていただきます!」


って、ことみたい。


「競技時間は、今日はこの後12時から17時まで。

 明日は、10時から15時までです!

 また、今日の夜は地元のお祭りが開催され、花火も上がります。

 冒険者の皆様は是非、そちらもお楽しみください!」


「へー!そうなんだ!超楽しみだね!」


 地元のお祭りの宣伝までしちゃうなんて、この島はちゃっかりしている。


「2日目の朝には、初日の順位が発表されます。それを参考に作戦を立て、2日目に挑んでいただきたいと思います。」。


「ちなみに参加者は、EランクとDランクを中心に178パーティ!優勝賞金は200万円!みなさん優勝目指してがんばってくださーい!!」



さあ、イベントの始まりだ!



 私たちは、イベント会場から程ないところにある森の浅部にある鳥居をくぐった。ダンジョンの階段を下るときと同じで、一瞬、平衡感覚がなくなる。つまり、ここからはもう、ダンジョンの中だ。


 私たちはドローンの映像を生配信に切り替える。


赤「リリィズです!」


緑「今日は、三重県の【賢島ダンジョン】に来てるでー!」


黄「このダンジョンは、地上1階がメイン。

  大きな大きな大森林が広がっています。」


黒「ランクEのダンジョンだ。気を引き締めて行かないとな!」



<始まった>

<待ってたぞー!>

<配信の間隔が短くてうれしい>


<俺の実家のそばだ>

<知らんがな>

<今日は何賭けてくれるのー?>



赤「なんにも賭けないよー!

  もう、賭け事の話は禁止ね!」



<えー>

<えー!>

<えー>


<楽しみが>

<配信見るモチベが>

<賭ケグルイましょう>



 視聴者には言わないけど、今日も大きな賭けごとしちゃってるのよ。みんなで稼いだお金を無駄にしないためにも、今日は絶対に負けられない!



緑「んー、モンスターは…ゴブリンアーチャーと、オーク、マンイーターか。

  レベルは全部2やな。」


黄「マンイーターは植物系ですね。」


黒「油断せずに進もう!」



 私たちは参加者同士の混雑を避けるため、森の奥に進んでいった。もちろん何も当てがないわけではない。3分ほど走ったところで、大きな影に突き当たる。




 オークが現れた。








☆☆☆


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