第11話 ルナピュールの特殊スキル
和泉が戻ってきた。
両手にはしっかりと子猫を抱えている。
赤「やったぁ!猫ちゃん、よかったね。」
私が笑いかけると、猫は短く
「なぁお」
と鳴いた。
か、可愛い…。
緑「お、お腹すいてへんか?」
葵は、子猫の目の前に猫のおやつを差し出した。さっき、余った樹液を使って、ちゃっかり作ってあったんだ。猫は嬉しそうに小さな舌でぺろぺろと舐め、もう1度「なぁお」と鳴いた。「ありがとう」って言ってるみたい。
黒「あの…、私も触らせてもらっていいか?」
リリスが子猫の頭に手を伸ばそうとしたとき、子猫と目が合った。小さくてまん丸で艶やかな瞳だ。リリスは顔を赤らめ、遠慮気味に子猫の頭を少し触った。
<照れたww>
<猫に照れてるww>
<なんでだよww>
<そんなリリスに照れる俺>
<リリス可愛い>
<猫になりたい>
赤「なんでこんなところに猫がいたのかしら。」
黄「確かに。誰か知りませんか?」
和泉が画面に向かって質問する。
<それ、猫じゃない>
<ルナピュールの幼体>
<モンスターだよ>
赤「そ、そうなの?猫タイプのモンスターなんだ。」
<正確には妖精タイプ>
<猫の妖精タイプのモンスター?>
<そんな感じww>
黄「あ、眠っちゃいましたね。」
和泉の腕に顔を埋めて、安心したように眠っている。
赤「この猫、連れていこうよ。」
緑「せやな。これだけ懐いてたら問題ないやろ。」
黒「大きくなったら戦えるようになるのだろうか?」
<ルナピュールは虎くらいの大きさになるよ>
<でも妖精だから、小さくもなれるけどね>
<だからと言って飼っている奴を見たことはないけど>
今は小さなモフモフだから顔を埋められないけど、そんなに大きくなってくれるんだ。それは楽しみ!毛並みのお手入れだけはちゃんとしてあげなきゃね。
<飼うことが可能ならメリットが1つあるぞ>
<うん。ルナピュールはスキルがいい>
<確かに戦力はアップするな>
え?そうなんだ!
なに?なに?
<成体になったらヒールを使えるようになります>
・・・。
赤「まあ、それはともかく新しい仲間だね!」
緑「名前は決めへんのか?」
黄「ルナピュール…ルナ…月…セレーネ!
セレーネなんかどうでしょう?」
黒「良いじゃないか!」
赤「じゃあ出発しようか!セレちゃんを起こさないように、ゆっくり歩こうね。」
私たちは階段を目指して歩き出した。後は10回層に潜って、ダンジョンボスを倒すだけだ。途中、モンスターに出会わないよう、ずいぶん迂回した。なんとか下り階段に辿り着く。セレーネは和泉の腕でぐっすり眠っている。
さて、静かにボスと戦うわけにはいかないよね。
妖精は収納魔法に入れるらしいから、異空間にセレーネ用の部屋を作ってあげて、中に寝かせることにした。さあ、とうとう10階層だ!
まだ冒険者になったばっかりなのに、今日のダンジョンではいろんなことがあったな!うん。すごく順調!
あれ?何か忘れている気もするけど…
☆☆☆
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