第10話 猫とカブトムシ
8階層にいたのはファイアビートル。
火を噴いてくるカブトムシだ。給食のコッペパンくらいの大きさがあって、気持ち悪かった。後は、群れを作って襲ってくるので少し苦労した。…くらいのものかな。
やっぱり私たちの敵ではない。
私たちは最短距離を進み、9階層に辿り着いた。見たところ、8階層との違いは感じられなかったので、モンスターも同じ感じなんだろう。もう1つ階段を下りて、10階でボスを倒したら、クリアだね。
<余裕すぎる>
<今のタイムは?>
<2時間50分>
<記録更新ある?>
<むしろ楽勝ペース>
<つまらねー>
<おいww>
<真面目に応援しろww>
<不純な奴だwww>
黄「あれ?みなさん、ちょっと待ってください!」
和泉が急に立ち止まった。
赤「あ!あれね?」
緑「ほんまや!あんな小さい反応、よく気付いたな。」
黒「急いだほうがいいな。」
<始まった>
<よくわからない会話>
<いつも何が見えてんだよw>
<今度は何km先だ?ww>
最短距離のルートからは1㎞くらい外れている。けど、私たちはうなづきあって、そっちの方向に急いだ。
現場に辿り着くと、1本の松の木があった。その木を取り囲むように、ファイアビートルが10数匹飛んでいる。そして、その中心にいるのは、松の枝の上で怯える子猫だ。
助けなきゃ!
<あれか?>
<あれが見えてたの?>
<何でわかるんだよ…>
<見るんじゃない感じるんだ>
<ジャッキーチェン?>
<ブルースリーだw>
赤「さあ、どうする?」
黄「下手に刺激したらファイアビートルが火を噴いちゃいますね。」
私たちは、今日、初めて困った。
縮地で近づいてファイアビートルを一掃する。縮地で近づいて、先に子猫を救出する。魔法で遠くからファイアビートルを倒しきる。いろんな選択肢はあるけども、100%上手くいく保証はない。
赤「ねえ、葵。ファイアビートルを眠らせる煙は作れない?」
緑「あほ!猫ちゃんまで眠ってしまって木から落ちたらどないすんねん。」
赤「じゃあ、和泉のバフで子猫ちゃんを強化するとか。」
黄「それでこの数のファイアビートルと戦わせるのですか?」
黒「甘い匂いの煙を作って、ファイアビートルを呼び寄せるのはどうだろう?」
緑「それや!」
緑「みんな、クヌギの木から樹液を集めて来てくれるか?
うちは精製の準備をしとくから!」
私たちは大急ぎで、そのあたりの木から樹液を集めて持ち寄った。
緑「よっしゃ、樹液はこんなもんでええやろ。」
葵が薬師の仕事をしている。
<そんなことまでできるの?>
<むしろこっちが本職だ>
<プロフ読め>
緑「さあ、できたで!【ハニースモークウッド】や!」
赤「さっすが葵!」
黒「こっちが風上だからここでいいな。」
黄「じゃあ早速火をつけますね。」
和泉の剣先から出た光が、できたてのアイテムに触れ着火した。モクモクと煙が上がり、松の木のほうへ流れていく。ファイアビーストも匂いに気づいたようで、その場で旋回するものが現れるなど様子が変わってきた。
そして…とうとう彼らは、群れでこちらに飛んできた。
もうこっちのものだ。
黒「子猫ちゃんは和泉に任せるぞ!」
リリスがそういうと、私たち3人は木刀を構えた。私たちは次々とカブトムシを打ち落とす。あっという間だった。
赤「飛んで火にいる夏の虫ってやつね。」
緑「誰にどんな比喩つかっとんねん!相手はファイアビーストやぞw」
ともかく、ファイアビーストを殲滅した。
私たちが一息ついたところに和泉が戻ってきた。
☆☆☆
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