第5話 剣聖の力は半端なかった

 身体の動かし方がわかる。



 ラットが走って近づいてくる。

 私に飛び掛かかる。


 見えているような、感じているような、

 すべてが手に取るようにわかる。


 私は静かな世界にいて、そのラットを切ろうと思いつく。

 そうすると身体は反応し、ゆっくり流れる時間の中でラットは私に切られていた。


 まるで、バターを、いや豆腐を切ってるみたいに手ごたえがない。



 どドスッ


 2つに分かれた1体のラットが地面に落ちる。


 赤「なにこれ?すごい…。」


 私は快感に身もだえた。

 顔が紅潮しているのが自分でもわかる。



<え>

<え>

<え>

<何が起こった?>

<木刀だよな?>



赤「剣聖は木刀でも切るんだよ。」


 私はカメラに向かって舌を出した。

 ピースサインまで決まった。


 剣聖は魔法がつかえる。魔力を属性に変換するような無駄をしないだけで、武器に魔力を宿らせて切れ味を増す。剣聖は魔力量が人並以下だったようで、効率化が美しいまでに洗練されていた。


 つまり、剣聖には木刀が1本あったら十分。だから私たちのパーティは4人とも、武器は木刀を装備した。



<すごすぎ>

<マジ神業>

<やばい。震える>

<しびれた>

<昨日のあれは何だったの?>



視聴者の喝采が止まらない。


 魔力を自分を中心とした球状に広げると、その中の出来事はすべて手に取るように分かった。これが剣聖の戦いなのか。私はこの半径数mの球をうんと広げてみた。うん。私の魔力量なら10㎞くらいは無理なく広がる。



赤「ちょっと精度は粗くなるけど、十分だね。」


 地下2階に降りる階段はあっちか。目で見ているように確信できる。


赤「さあ、みんな行くよ!」



私たち4人は、躊躇なく階段に向かった。



赤「あ、あっちに…」


緑「うん。うちも気付いてたで。」


黄「ですよね。」


黒「ゴブリンが10体だな。」

 


 みんな、同じように魔力の使い方を理解している。同じ記憶が頭に入ったんだから当たり前か。



<どこ?>

<ゴブリン??>

<どこにもいない…>

<妄想おつ>



 そりゃそうだ。ゴブリンがいるのは3kmくらい先だもんね。私たちの身体はJKのままだけど、自然に魔力で強化しちゃっている。そんなに急いだわけでもないのに、ゴブリンの群れには5分もかからず遭遇した。


緑「さあ、見せ場やで!」


黄「私も負けないですよぉ!」


黒「運の悪いゴブリンたちだ!」


赤「え?え?ちょっと待ってよぉ!」


 出遅れちゃったので、私は1体倒しただけだ。その分3人の剣技を目の前で見た。本当に綺麗だな。惚れ惚れするってこのことだ。



<ホントにいた!>

<ほんまや>

<ゴブリンいたー>


<え>

<え>

<えええぇぇぇぇぇぇええっ!!>


<何が起こったの??>

<動きが見えなかった…>

<ゴブリン10体が瞬殺!>



赤「どう?昨日は恥ずかしいとこ見せちゃったけど、今日の私たちは一味ちゅがうょ!」



<wwwww>

<w>

<また噛んだww>

<ちゅがうょ>


<www>

<ww>

<wwwwwwwwww>



私の最高の笑顔は、恥ずかしさのあまりピースサインと一緒に固まった。





☆☆☆


ご愛読ありがとうございます。

どうか、フォローや★評価など、よろしくお願いします。


★評価のつけ方


①評価したい作品の目次ページに戻る。

②レビューのところに「⊕☆☆☆」←こんなのがあるので⊕を押して評価する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る