第3話 パーティメンバー①戦士ジュード

―ヌイーダの登録所―



僕「で?どうやってパーティメンバーを集めればいいんだ?」


ヌイーダ「アルフは勇者だから、黙っていてもすぐに引き取り手が見つかるはずよ。通常は登録料として500ゼニー頂いているんだけど、アルフは未成年だし、勇者だから特別に無料にしておいてあげる。そのかわり、選ぶ側から勇者紹介派遣料として料金を頂くから、お時給のうち80%は私がもらうことにするわ。」


僕「ここは人材派遣会社だったのか。80%とかぼったくりだな。」


ヌイーダ「あ、ほら早速向こうから戦士っぽい人がきたわよ。」


戦士風の人「ぬぉーーーーーっ!!!なぜっ!!!こんなところになぜ勇者様のご登録が。拙者は、アルマゲと申すッス!!!職業、戦士。レベル43。性格は、夢見る乙女でごわす。さぁ、おいどんと一緒に、愛と正義の冒険の旅に出るでごわすよ。」


僕「いや、色々と無理。まずキャラを安定させてからきてくれ。」


アルマゲ「この登録所の中でもおいどんのレベルと支払えるゼニーは最高クラスでごわす。おいどんとパーティを組めば最高クラスの暮らしが保証されるでやんす。」


僕「この暑苦しさを四六時中味わうなら、クラスも暮らすも普通でいい。」


アルマゲ「残念でごわす。」


―2人目―


ミッキー「あら、あなたが新しいお仲間?あたし、ミッキーっていうの。ミキたん❤って呼んでね。うふん。職業:女戦士。性格:セクシーギャル。装備:ビキニアーマー。レベル:5。どう?一緒に冒険しない?」


僕「ぜ…ぜひご一緒に…といいたいところですが、冒険に集中できなくなりそうなので、やめておきます。ぼ…僕がもっと今より強くなって…あなたをお守りできるその日がきたら、きっと……」


ヌイーダ「アルフ。いつのまにか冒険に出る気満々じゃない。」


―3人目―


ジュード「よぉ、アルフ。なんだ、てめぇもこの登録所にきてたのか。ってことは…てめぇもヌイーダ姉さんに”アレ”してもらったのか?」


僕「ジュード。変な言い方はよせ。マッスルパウダーを振りかけられただけだろ。」


ジュード「いいや、俺は”アレ”してもらったぜ…ふふっ。」


僕「まさか…僕とジュードで、してもらったことが違うとでもいうのか…!!??」


ジュード「どうせお前はただの粉ぱふぱふだろ?俺は……マットプレイだ。どうだ。いいだろ。」


僕「筋力トレーニングのことだろ。口をつつしめ。」


ジュード「違う。ヨガだ。股関節の開脚ポーズを教わった。」


僕「絶妙に羨ましいな。僕もそっちが良かったよ。」


 2人で与太話よたばなしをしているとカウンターの奥からヌイーダが戻ってきた。


ヌイーダ「あらあら。2人、仲良さそうじゃない。もう、一緒にパーティ組んじゃいなさいよ。」


僕・ジュード「「絶対に嫌だ!!!!」」


ヌイーダ「ほら。息ぴったり。じゃあ、手続きを進めるわね。あなた達は2人とも未成年だから、残りの保護者役パーティメンバーが加わってからの旅の開始になるわ。2人分の紹介料と給金を払ってくれそうな登録者は…と」


 ヌイーダは手元にあった登録者名簿を探り始める。


僕「勝手に話進めるなよ。ヌイーダ、なかなか悪どいな。」


ジュード「オレは、俺・女・女・女パーティでハーレム旅をするためにここにきたんだ。アルフと一緒の冒険なんて勘弁だぜ。」


僕「僕だってハーレムがいいよ。それに、学校もプライベートもジュードと一緒なんて勘弁だ。」


ヌイーダ「そうはいっても、アルフはこう見えて勇者。ジュードはこう見えてレベル14もあって、なかなかの腕前よ。」


僕「『こう見えて』は余計だ。しかしジュード、なかなかやるな。学校に包帯巻いて来てたのは、ただのキャラづくりじゃなかったのか。ちょっと見直したよ。ジュード、よろしく頼むよ。」


ジュード「ふっ、てめぇもようやく俺様のすごさに気が付いたってわけか…遅せぇんだよ。ガキが。まぁ、仕方ねぇな…俺の方が、2か月と4日、早生まれだからな…。俺の一番弟子は、アルフってことにしといてやるよ。俺の剣裁きを見て驚くがよい。くくっ。」


僕「あ、そうそうヌイーダ。ちなみに、ジュードの性格はなんなの?」


ヌイーダ「ジュードの性格?…『わるい』。」


僕「え?」


ヌイーダ「性格:悪い。」


僕「いや、それ性格じゃなくてただの評価だろ。」


ジュード「そういうアルフの性格はなんなんだよ。」


ヌイーダ「アルフの性格?『うそつき』」


僕「おい!『おちょうしもの』に変えたんじゃなかったのかよ。」


ヌイーダ「あ、忘れてた。ごめんごめん。」


ジュード「最悪のパーティと仲介人だな。けっ。さかむけの傷跡がうずきだすぜ…。楽しい旅になりそうじゃねぇか。」


 ジュードはキャラクターイラスト入りの絆創膏をまるで剣を抜き取るがごとく素早く大袈裟に取り外すと、長い包帯をくるくるとなびかせて指先に巻き始めた。









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