2. Day 0

13.

          *


 

 優秀な殺し屋は匂いのつくものは嫌うんだ。


 

 と言われたのはいつだったか、ぼんやりと思い出そうとする。

 いつ言われたのかもあやふやであるし、それを言ってきた相手の顔も曖昧だ。


 その時の自分は、殺し屋でも何でもないと思っていたし、どうせ禁煙しろと言われているだけから、覚えていても仕方ないと頭が切り捨てたのだろう。


 任務だからやっていただけで、それを罪悪視する必要はないと思っていた。

 たまたま技能を認められ、自分に与えられた任務を果たしただけだ。

 だから何故"殺し屋"などと言われるのか、当時はわからなかった。


 今なら少しはわかる。

 

 任務という大義名分を失えば、そこに現れる自分の姿は、人殺しかできない人形だった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る