Track 007 I'LL ALIVE DAYBREAK 'CAUSE...
ぼくは思わされる。
作曲家としての本能で。嗅覚で。
すり抜けている。
それこそ、今でこそ、譜面を見せてもらいたいものだと、そう、驚嘆を禁じ得ないために。協和音と不協和音があまりにも複雑に入り組み、そこかしこで調和と自壊が繰り広げられているにも
アマウチユヅル。
例えばぼくが、〈SO LONG, MAGGIE〉において、マイナーコードしか用いずに、それでいて
なあ、あんたの
そうでなければ、
三條は彼の言うことを解読したというが、きっと全てはやり損ねた。ぼくとは同じ穴の
――そう、パズルなのだ。
複雑怪奇にありながらも、だ。
あまりにも、完成している。
〈
殺す。
何がどうあろうと、必ず、殺してやる。
統一の極限にあって、殉教者たちもまた、全身全霊を
狂騒の
協和と不協和。
今を願わない。
たった今を、見ていない。
ぼくらがライヴごとに死ぬのは、今だけを求めているからだ。だから、その瞬間ごとに価値があり、
突如、殉教者たちの密集の中に流れが生まれて、失神でもしたのか、どうか、意識の確かでないひとりが、いっそ鮮やかなまでに速やかに、個々の協力のもとで掻き出され、助けられ、スタッフに託される。まさに三條の歌唱の響く中で、それをする。それをただ、礼儀作法とは思わない。思えない。熱意を、協調を、友愛を、そして何より、生への執着を、その共有をそこに見る。違う。そうだ、決定的に違う。
生きようとしている。
今この時が、殉教者たちの熱望のもとにあるのは確か。
しかし、必要なのは今じゃない。
自らの生きる、明日だ。
正解はひとつ、希求はひとつ、生存。結末はライヴの対極にある。
明日は万民にとって等価値ではない。明日の生存を望むか、拒むか、知れたものではなくて。生き延びていたくない夜明けがある、当夜のうちに断ちたい命がある、明日、明後日、それ以降、さらに先、生き延びていられるか、生き延びていたいのか、望まないのなら、
せめて生きたい。
是非無く
今夜、自死の誘いの消え失せてくれと。また再び、遠からず、いずれ生じてしまうのだとしても。
多くは欲さない。
夜が明けた時に、夜が明けたのだとだけ、ただ思いたい。
生き延びてみせるよ。
明日を、その先を。
だから殺して。
今ここで。
またあなたに会いに来るから。
凄絶な
たったの三十分、央歌に触発されたのでもなかろうが、三條の吐息は乱れていた。時間的に最後の一曲を残すのみというところ、息が
三條は曲名を告げて、
「またきっと会おうぜ。なァ。〈Alive Daybreak〉――」
握っていたマイクを、そっとスタンドに戻した。
鳴らない。
バックの演奏が何ひとつ鳴らすことのなければ、弾くことのなければ、重々承知の殉教者たちも、物音ひとつ立てまいとしながら、ただ耳を澄ませる。残された
独唱であり
まったくもって、ライヴハウスを聖堂に変えてしまうなんて、よくやるよ。
三條は歌った。あらん限りの祈りに
再会の時のために。
命ある連中と、再び。きっと。
曲のサビを前にしようかと思われるところ、その独唱が途切れたところ、殉教者の群れは動いた。あらかじめ望んで
殺されてこそ、生きられる。
祝福しよう。
月の裏側の正しさを。
We Sing Every Hurt for Us
きっと殺して 何度でも
あなたの歌で
生きていきたい だから殺して
We Sing Every Live for Us
ずっと殺して 響かせて
あなたの息が絶えるまで
殺して 殺して 殺して
あなたの歌で
生きていきたい だから殺して
狂騒の
リーダーである
呆れなのか評価なのか、ぼくも定かではないのだが、全くすっかり見届けてしまったのであれば、何も言わずにはいられず。「完全犯罪の大量殺人には違いなかったね、まったく、ちっとも、そうだったけど、あんな
ぼくも火を
ぼくは黙って
三條は
少し、気持ちのゆとりが生じたのか、三條は
三條の瞳が
愉快な心持ちを
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