DISC-03《FOR LOST ENDURANCE》
Track 001 GLAD TO MEET YOU
自分の
章帆は葛藤を引きずるではなく、今では、〈
四人揃って〈
央歌は黒板の一番上の長い名を、指で弾いた。どうやら、央歌にも不評らしい。「名前で語るな。
八汐は黒板から章帆へと瞳を移し、疑いとして、じっと覗き込んだ。「何か、めちゃくちゃ詳しくない。ちょっとさすがに。」これが女の勘というものなのか、どうか。八汐はさらに一段、章帆を深く覗くので、思わず章帆がたじろげば、答えが見えたのか。「章帆さん、昔、このバンドにいたりした? というより、メンバーに元カレか元カノ、いたりする?」何やら勝負あったらしい。章帆はすっかり敗北の様相になり、素直に白状するよりなく。「今カレの前でこの試され方、
どのみち面倒なことになるのだから下手に隠すよりはと、ぼくと章帆が付き合うということについては、早々にバンド内で知らせていた。あくまで知らせることを優先するのみ、との形であって、つまりぼくは
章帆の隣を央歌はすり抜けて、先に階段を降りつつ、「それなら、ここで
反省の態度を示すため、という程の話でもないのだが、あえて印象を悪くすることもなかろうと、ぼくらははっきりと、一番乗りを狙う時間に来た。にもかかわらず、五人組がそろって楽屋に待ち構えていたというのは、おそらく、本来は許されてはいない時刻に、さっさとここに入っていたものと。座るなり立つなり
すぐ、その紅の男の目線は章帆に向いた。「お前、連絡ひとつよこさねえのな。高校の同級生に、メジャー行きおめでとうくらい、知らねェ仲でもあるまいによ。」いっそ
散々に言われても、男のほうは、半ばまでは取り合わなかった。「嫌われてるのは否定しねェよ、今後の円滑な人間関係ってやつのために、
空気はぴりとしても、章帆はいったんは
三條はからからと笑って、話を横道に逸らした。「いいじゃねェの。糸原っちが活動を待ちに待ってた
三條は自信ありげに、あるいはいかにも愉快とにやついた。「榮サンのほうの縁で、〈
三條は気さくなままに、機嫌良く訊ねる。「なあ、〈略奪者たち〉サンの中で、喫煙者はいたりしねェか。共演者の
声音は好悪を含まずに真剣であり、ぼくと三條の一服を邪魔しようというのではなかった。「三條、少し待て。一分、一分だけ待て。今カレは素直に送り出してやるから、ちょっとだけ廊下で待ってろ。」そう言われれば、三條のほうは特に何かを疑うでなく、そのままに廊下へ出た。足音が続くではなかったので、実際にそこで待っている。
今カレ、なんぞと、今のぼくたちにとっては不穏極まりない単語ではあったが、誰も気にしなかった。章帆の様子から、バンドの、〈略奪者たち〉の、オンガクとぼくらの生きる
章帆の顔つきは、次第、苦みを噛むものとなっていった。本題の核心はこれからと。「〈
苦みを噛み締めるのに飽きたか疲れたか、とうとうついに、章帆は諦めの多分に混じる、しかしそれでいて、紛れもないげんなりで、話を締めた。
「ぶつけるつもりなんです。〈
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