Track 010 WISH SET ME ON THE BRINK
対バンのうちの一組であるビジュアル系バンドの
ライヴ当日、リーダーは多少なりと
ぼんやりと、薄く、気に留めなければそれで済む水たまりとしてあっても、つい、だ。「どこに行き着きたいんだろうな。」にわかに生じる
央歌は怒りを抑えず――本番当日に、空腹で自分を
央歌のほうが明確に、正しく、〈略奪者たち〉というものを認識していた。理解していた。シャツの胸ポケットから吹き飛んだ煙草を拾い、灰皿は楽屋に置かれていても、
確かめて、章帆はあっけらかんとするのみなのだ。「地球上なら大丈夫じゃないですか。火星の山とかじゃなければ。高さ二万メートルとか余裕で超えるんでしたっけ、あれ。」超える。ついでに言えば火山だ、それは。まったく、ふたりとも、〈
楽屋にいても、他のバンドの演奏はくぐもりながらも聞こえるのであるし、ましてぼくの
よって、〈
手持ち無沙汰のまま、後日の宿題、つまりは
楽屋の入り口そば、通路で、章帆がいずこかからきちんと回収してきた央歌も交え、立ち話となった。章帆は表情を
好きにしてくれよ。ぼくは好きにする。拒むとは言っていない。それを望んでもいない。ああ、いいさ、おのれの
ぼくは今の〈略奪者たち〉を、結局のところでは、粗末な不完全品としか思っておらず、欠けたピースを埋めるためにこそ、今夜の
結末は、ひとつだけで、確かで、そうなるんだ。
落涙のギターを絶え間なく呼ぶ、
何を言っても余計なのであれ、
「私たち、もう根本的に、オンガクに愛されてないですよ。そりゃもう。愛されるわけがありますか、こんなバンドで。でも、だったら何だってんですか、オンガクで不幸になって何がいけないんですか。
ぼくと央歌は、ひたすらにぼくたちだけの音に飢えて、静かに頷いた。
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