夜尿症

クライングフリーマン

夜尿症の話

 小学校何年生からだったか、私には大きな持病「夜尿症」、つまり、『おねしょ』があった。

 世の中には、「治る病気」もあれば、「治らない病気」もある。

 そう言われたのは、母がどこかに連れて行ってくれた、祈祷師みたいな人だった。

 その言葉を実感したのは、随分後のことだった。

 母は、なかなか治らない夜尿症の為、方々を駆け回った。

 今なら、漢方薬でも新薬でもいいものがあるだろうが、60年以上昔の話。

 あるとき、親戚の女の子が夏休みに遊びに来て、姉妹や、その子には、風呂上がりにアイスを,貰って、食べていた。

 私は、私だけは指をくわえて見ていなければならなかった。

 夜尿症である。「ダメ。おねしょするから。」

 そう言われたら返す言葉がない。

 夜尿症は、突然止まった。

「むせい」が始まり、股間にも性徴が現れた。引き換えに、夜中にトイレに行くことが日課になった。

 高校生になり、一時的に「尿道炎」になった。

 泌尿器科の先生は、母と私に言った。「授業の休み時間毎にトイレに行くとおっしゃいましたが、頻尿は必ずしも病気とは言えません。体質もあるのです。むしろ、少なすぎる場合の方が危険です。尿道炎は、すぐ治ります。下着を長時間身に着けないようにすれば、尿道炎にかかりにくくなります。あまり、神経質になると却ってよくないですよ。」

 今は、高齢者として、立派な「頻尿」だ。だが、そのこと自体は気にならない。

 風呂上がりに、アイス食べても怒る相手はいない。

 死ぬまで「独居老人」でいる覚悟は出来ている。「遺言書」もエンディングノートもある。

 恐いのは、「目覚め」位なものだ。今日もアラームに勝ってしまった。

 朝食を終えたら、Webサイトに投稿する習慣は恒例だ。

 時折、気まぐれにYouTubeのLive番組でチャットをする。

 その前に、トイレ行かなくては。

 ―完―


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夜尿症 クライングフリーマン @dansan01

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