第二話

10月、夏はもう過ぎ去って完全に秋が秋が訪れた。

穹音宅にて本日も穹音による魔に関する講義が行われていた。

「ソロモン、魔法と魔術については覚えているか。」


「はい。魔法が魔を支配する法で魔術が魔を魔を使役する術のことです。」


「ひとまずは、その理解でいい。では魔術と魔法、この二つの明確な差については理解しているか?」


「えっと、魔法より魔術のほうが規模が大きく優れているとしか…。」

ソロモンの返答に頷くと穹音は話を続ける。


「そうだな。それも差の一つと言えるだろうが答えとしては足りていない。魔術とは才能の乏しい者…無い者ではない乏しい者だ。そのような者たちが奇跡を起こすための力だ。主に内容が記述された術式を魔力によって起動し、発動させている。魔術の内容によっては魔力が足りずに発動できなかったりすることもあれば、術の制御に失敗し暴走や消失、減衰することがある。ここが魔術と魔法の大きな差の一つと言える。魔術は挑戦に成功、失敗がついて回るが魔法にはそれがない。、発動できるできないの有無はついて回るし、必ず成功するという性質上魔法の内容や出力は常に一定になるがな。」


「それはとてつもない差じゃないでしょうか…」


 発動の有無の差、それは雲泥よりもさらに大きく魔術と魔法を隔てる。

大前提として、魔を操る魔術と魔を支配する魔法では出力に大きな開きがある。アプローチが違う時点で何かしらの違いができるのは当たり前なのだが、自分の操れる範囲でしか発揮できない力と法の中という制限はあるものの、人の身では操れなくても支配という形で使用できる力では話にすらなっていないと言えるだろう。

それに加えて魔術は集中の乱れや疲労の蓄積、発動する場面で出力にムラがあるのに対し、強大な力が常に一定というデメリットよりもメリットが大きい性質。普通に考えればどうしようもない差ではあるが…

「いや、この差に関しては決して越えられないことはない。」

言い切ると指を立てながら話を続ける。

「例としてとある魔法を挙げよう。第十三魔法、絶対障壁というものだ。」


「絶対障壁…。防御系統の魔法でしょうか?」


「そう、指定方向に超硬度の魔術障壁する魔法だ。今でも一つの魔法を除いてすべての魔法、魔術を防ぐことができる優れた魔法だ。」


「そんな魔法を魔術でどうこうなんてできるんですか…?聞く限りではどうしようもなさそうですけど。例えば後ろからの狙撃とかでしょうか?」


「それも手ではあるがお前でも思いつくものを対策しないわけないだろう?使い手は常に死角は防御していたよ。答えをいうと光系統の魔術を壁を迂回させるように屈折させて攻撃したんだ。術者は奇襲を警戒していても正面から魔術に突破されると思っていなかったみたいでな。光系統の術だから壁の展開も間に合わずにお陀仏というわけさ。要するに応用をしっかりとし、隙を突けば優位性を揺らがすことはできる。だから考えることを放棄せず、相手を観察することは心がけるべきだ。」


頷き、手元の紙にメモを取り始める様子をちらりと眺めると穹音は近くにあった手頃な椅子に腰を掛ける。しばらくすると走らせていたペンが止まり、ソロモンはこちらに目を向けた。

「すいません。先ほどは成功の有無が大きな差の一つと言われてましたが、その言い方ですと他にも差はあるのでしょうか?」


「ふむ。よく聞いているな、さすがだ。では他の違いにも」

ドンドンドン!扉の叩かれる音によって話が中断される。

「お客さんですかね…行ってきますか?」

そうだな…と声を上げる前に外からこちらを呼ぶ声が聞こえてくる。

「おい!穹音出てこい!五秒で出てこい!さっさと来い!」

「………今のは?しかも女の人の声でしたよね。」


「あれは出なくていい…何もせず過ぎ去るのを待つべきあらs」

瞬間爆発音。最後まで言いきることもできず、衝撃が訪れる。周りを見てみれば玄関の扉から二人のいる部屋まで一本の道ができている。どうやってか作ったであろう、その道を通ってくる人物は意外にも小柄でそのシルエットはまるで…

「女の…人…?」

現れたのはロングの黒い髪を持つ、まさに大和撫子といった風の美しい女性だった。

その女性はこちらに目向けるや否や

「五秒経った、アンタの優しい幼馴染様が来てやってんだから来ないほうが悪い。」

と悪びれもせず言い放つ。その様子に呆れたようにため息をつくと言い返す。

「お前、いなかったらどうしてたんだよ…相変わらずだな。」


「いなかったらなんて仮定はよしてよ。今までそんなことなっかたでしょう?基本的に家から出ないなんてわかってんだから。」


「…ストーカー。」


「よしぶっ飛ばす。そこに正座しろ。」

言い争う二人に置いて行かれ、呆然とするソロモン。

一向に二人の子供のような口喧嘩は終わらず、我に返ったソロモンが二人の仲裁をし落ち着くまでに十分以上は過ぎていた。






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第二十四魔法の使い手~その魔法使い、稀代の天才につき~ 帝王カステラ1号 @yorunoaoi0220

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