第一話
2007年9月中旬時刻は18時手前。まだ少し夏が顔をのぞかせるこの時期のこの時間帯に町をかける少年の姿があった。
少年の名はソロモン、その名前を裏切らないブロンドの髪と緑の目を持つ、日本生まれのイギリス人である。
時代を先取りしすぎたといった風の喫茶店の前で右曲がりをし、路地裏へと入っていくソロモン。
そのまま2,30mほど進むと左折次に右折さらに右折し左折しと入り組んだ暗がりを迷いなくすいすいと進んでいく。
路地裏に入りほんの5分ほど、曲がった回数は30を超えたところで歩みがゆったりとしたものになった。
そしてピタリとその足が止まった彼の前には一つの建物、狭い路地の中にあるには不自然な大きさの家だった。
スゥ…と一つ深呼吸をして息を整えると扉を叩き家主を呼ぶ。
「こんばんは!本日も不肖の弟子ソロモンが参りました!入ってもよろしいですか!」
家主からの返答はないが我関せずといった顔でドアを開け、中へ入ってゆくといくつかの部屋を素通りして奥へと進んで廊下の突き当りに行き着く。
左右に部屋が一つずつ、そのうち右手の明かりのついた部屋へ向かっていき、挨拶とともに扉を開く。
その部屋の中にはまだ20半ばといった日本人の青年がお湯の注がれたカップ麺と見つめあっていた。
本日もご指導のほどよろしくお願いします。挨拶するソロモンに青年は目もくれずにじっとカップ麺を見つめ続けること1分。
「ここかっ!」
突然叫んだかと思うと蓋を開けて麺をすすり始める青年にソロモンは苦言を呈する。
「いつもカップ麺ばかりですが、もう少し栄養バランスとかどうにかならないんで すか…」
「むぐ?ふぉへふぉんふぉふぉんふぉふぇふぁふぁふぁ?」
「えぇ…さっきからずっといました。目の前の食事に集中してたんで気付かなかったんじゃないでしょうか。」
彼の言葉に青年は一つ頷くとゴクンと麺を飲み込む
「そうかいつも悪いな。」
「いや学ばせてもらってる身なのでいいですよ、
「ならいいな。じゃ、食事が終わったらいつも通りの講義だから部屋行っといてくれ。」
麺を啜りながら淡々と指示する青年に一つ頷くと入ってきた扉を開け、真正面の部屋に入るソロモン。
彼が移動して数秒経たないうちに空にした容器をゴミ箱に投げつつ青年は後を追う。飄々としたこの青年の名は
新たに三つの魔法をたった一人で創り上げた、史上最高の才を持つと謳われる現在まで五十二人しか存在しない魔法使いにして稀代の魔法創生者である。
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