第7話 裏切者

靴を履き替え、校門を後にしてから数分、後ろからドタドタとこちら側に誰かが走ってくる音が聞こえた。


「山神くん!やっと追いついた」

走ってきたのは九条さんだ。


「まだなんか用?」

「用っていうか…」

僕は間髪入れずに続けた。


「僕は君みたいな人と関わる気もないし、人をあざ笑うために近づいてくる奴なんて大っ嫌いなんだ。何もないんなら話しかけないでくれないかな?」

言いたいことを思いっきり言ってやった。

さっきまで人の陰口を言っていた人間が、どの面下げてきたんだよと思うとイライラして仕方がない。


「そういうわけだからもう行くね」

「まって!」

そう言うと、彼女は僕の右腕を掴んで引き留めようとする。


「さっきの話聞いてたの?」

自分から白状しだそうとしているのかわからないが、謝って許してもらえると思っているのならより気色が悪い。


「聞いてたら何なの?」

「その…どこまで聞いてた?」

「どこまでかは知らないよ。ただみんなで寄ってたかって僕の陰口で楽しんでたのは知ってるくらい」

「それは…本当にごめんなさい」

やっぱり謝って許してもらおうという魂胆か。この謝罪の言葉に僕はとても失望した。


「そういうのいいよ。最初はほんとに九条さんは他とは違ういい人なのかなって期待したけど、まあ僕がばかだったよ。じゃあね」


そう言い放ち、彼女の手を振りほどいて歩き出した。

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