第5話 彼女との出会い2


彼女が濡らし終わった雑巾を手に、走って教室に帰ってきた。

「ちゃっちゃと終わらしちゃいましょ~!!!」


そう言い、彼女は窓際の方から黒板を雑巾で縦に拭き始めた。

「なにボケ~っとしてるの?早くそっちから拭いてってよ」

本当に手伝ってくれている彼女に驚きつつも、彼女の綺麗な髪がなびくのをじっと見つめる僕に、彼女は声をかけてきた。


「う、うん。ごめん」

困惑のあまり、うまく返すことができなかった。


黒板を拭く2人の間に会話はなく、しばらくの沈黙が訪れた。


「よし、ようやく終わったね!あとは…この提出物を運ぶのみ!」

「いいよ。あとこれくらいは1人でできるから。」

「だーめ!ここまで手伝ったんだし最後まで一緒にやらせてよ。ね?」

「まあ、やりたいんならいいけど。職員室には僕だけが入るからね?」

「おっけ~!じゃあ職員室前まで半分こしよっか?」

「ん。」

なぜここまで協力的な態度を見せるのか、理解に苦しむ。


僕みたいな人間と絡むことはメリットよりもデメリットの方が圧倒的に大きい。

中学の時、助けたお礼にあれを奢れだの、金をよこせだの言われたこともある。

結局は彼女も最終的にカモにしようとしてるんじゃないか。そういう考えが脳裏をよぎる。


「じゃあ、これよろしくね!」

「ありがとっ。出してくる」

「うん!ここで待ってるね!」


なぜ待たれるのかもよくわからないが、とりあえず提出するために職員室に入った。

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