第4話 彼女との出会い
入学式から数か月、周りは完全に自分たちのコミュニティを形成していた。
最初は机に突っ伏していた陰キャたちも、友達を作って楽しそうに生活している。
「結局みんな裏切者か」
はぁ…とため息がこぼれてしまった。
放課後、今日が日直だった僕は教室の清掃やら、提出物を先生のところに運ぶやらの仕事が残されていた。日直は毎日日替わりで2人いるが、今日の僕以外のもう1人は遊びに行くからやっといてと僕に仕事を丸投げだ。
腹は立つが、中学の時なんて当たり前のような光景だったので慣れっこだ。30分もあれば1人で全部終わるだろう。
そう考えながら、誰もいなくなった静かな教室で1人作業に取り掛かった。
箒で床を掃き、黒板を綺麗にするために雑巾を取り濡らしに行く。
当たり前だが教室に戻っても誰もいない、木漏れ日だけがさした部屋を前にして大きくため息をついた。
その瞬間、
「う、うわぁぁ!?!?」
いきなり肩を軽く押された僕は半ば強制的に教室に押し込まれる形となった。
後ろを振り返ると、見覚えのある女の子が笑いをこらえるかの表情でこちらを見ていた。
そして数秒後、彼女は大きく笑い出し、僕はついに高校でもこの扱いを受けだしたかと一気に落胆した。
「だれ?僕になんか用でもあんの?ないなら帰ってくんない?」
少し腹が立ち、強みに言ってしまった。
「ごめん、怒らせちゃった?ってか誰ってひどい…」
どうせ思ってもない謝罪なんだろう。そんなものは余計に腹が立つし、イライラさせてくる。
「質問に答えてくれない?何もないなら掃除の邪魔だから」
「えぇ……」
彼女は少し困惑した顔をする。
「私同じクラスの九条 唯(くじょう ゆい)なんだけど。知らないかな?」
「あぁ、あの陽キャのクラスの中心人物ね」
「なっ、陽キャでもないし中心でもないよ!!」
彼女は入学式の初めに和の中心にいた、茶髪のような金髪のような女の子だ。そう、僕が最も苦手で嫌いな人間の1人だ。
「で、何の用なの?」
「用っていうか、なんか教室眺めてため息ついてたからどうしたのかなって。」
「なんも。掃除だるいなと思って…」
「日直山神くんだけじゃないよね?もう一人は?」
「帰ったよ。早めにね」
「帰ったって…。それじゃあ山神くんに全部押し付けて帰ったってこと?」
「そうだけど。もう慣れっこだし、なんとも思ってないからいいけど」
何の用もないのに僕を煽りに来たのか?
こうやって僕に憐みの目を向けてるふりをして、結局は裏切ってくる奴は今までもたくさんいた。
またこのパターンか…趣味の悪い奴だなと思う反面、今までのやつらとは何か違うものも彼女からは感じる。
「よくないよ!」
彼女はそう言い、手前にあった机にカバンを置き、腕をまくった。
「よ~し!今から黒板掃除かな?やるぞ~!!」
「えっ??」
今までにない展開に僕は困惑した。
「なに困惑してるのよ。山神くん1人じゃ時間かかるでしょ?だから私も手伝うよ!
それに山神くんに全部押し付けて帰ったのも腹立つしね!」
「ほ、ほんとに言ってるの?」
「あったり前じゃん!ちょっと待っててね!」
そう言うと彼女は雑巾を手に取り、僕にウインクしながら手を上げ、急いで蛇口の方に走っていった。
その時僕は、彼女に対しての罪悪感を少し感じたのと同時に、ラブコメのヒロインのようなかわいさを感じてしまった。
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