9話「ゴブリンとハウンドとレベルアップと」-2
「くぅーん」
残った1体が犬のような鳴き声を発した。助けて欲しいと。こいつはこの5体の中で弱い個体だったのだろうか。それで最後まで庇われていたと。
しかし、こいつも最初は僕を襲ってきたのだ。勿論殺すつもりで来ていた。じぁ仕方ないと割り切る。
モンスターがどのようにして産まれているのかは知らない。動物のように産まれるのか、それともダンジョンが産み出しているのかわからない。
はっきり言って殺生はあまり好きではない。もしかすると僕がこのダンジョンに入ってきた侵略者なのかもしれない。でも、こっちもここにいる限りは生きるために殺すしかないと割り切っている。自分を正当化していると思うが、当たり前だろう。まあ、ほとんどはレベルアップのためなのだが。
そんなことを考えながらブラックハウンドに最後のトドメを刺す。
綺麗に光の粒となって消えて行く様子は割と綺麗だ。しかも、これが僕の経験値として入って来るのは面白いことだ。
「よし、これで2階層も2周目終わりだ」
あの後2階層での出来事は普通に終わった。
レベルアップの影響か、1回目とは全く違う動きが出来たことで比較的にやりやすかった。ブラックハウンドの動きにしっかり対応でき、1体1体相手取ることができた。
そして、5体倒して3階層に降り、再び登ってきた。2回目は複数を相手するためにだ。
「でも、思ってる以上の動きが出来てると思う。レベルアップすげーな」
感心する。やはり、倒せた理由はレベルアップだ。思っているより動きやすくなっている。
「で、最後のハウンドも今消えたと……」
少し離れたところで今絶命したと思われるブラックハウンドが光の粒となって消えていた。
『レベルがレベル3に上がりました』
レベルアップの声が聞こえた。
「お、これでレベルアップか! うん、やっぱり感覚が違ってると思う」
2回目のレベルアップ体の変化はやはり感じる。レベルが上がるのはやっぱりすごく嬉しい。
しかし、このタイミングでレベルが上がったということは、1つの階層を2周すればレベルが1上がるのだろうか。多分そうだろう。
じゃあ、この調子で、
「3階層も行っちゃいましょうかっ!」
そのまま階段に向かう。
さっき降りた時3階層のモンスターは見ていない。
今の状態なら何がきても大丈夫だろうと少し楽観視もしていた。
◇
「で、この階層もゴブリンか?」
階段を降りてから歩いたところ少し開けた場所にでた。そこの中央にはチュートリアルの時のようにゴブリンが立っている。違う事があるとすれば、
「今回のゴブリンは武器を使うと、」
そのゴブリンは右手に棍棒を持っていた。黒く錆びている見た目だから、そこまで怖くない、ボロい印象しかない。でも初の武器持ちだ。気持ちを入れ替える。
武器を使うということはこっちと対等の力を持っていると考えよう。周りには何もないし、相手はこの1体だけなのだろう。少しボス戦みたいだな。
剣をいつも通り横に構える。
先手必勝だ。
「うおおおぉぉぉぉ」
気合いを入れながら駆け出す。一撃では無理そうだ数当てることにする。
まずは左からの横薙ぎ。
「ぎぎぁぁぁぁ」
横薙ぎが棍棒で受け止められる。
それは想像していた。
ぶつかった反動で一旦距離を取る。しっかりと踏ん張り、剣を上から振り下ろす。
それもまた受け止められる。
思ってるよりやるゴブリンだ。
しかし、攻撃は最大の防御。とにかく攻撃される隙を与えない。ここから、息が切れるまで連続攻撃だ。
「はああぁぁぁぁぁぁ」
左からの横薙ぎ。右に転じて右からの横薙ぎ。振り下ろし。右によれながらの振り上げ。右からの横薙ぎ。
攻撃するたびに体勢を崩すゴブリン。
これだけの連続攻撃でも腕はもう限界だ。が、最後の左からの横薙ぎをクリンヒットさせる。
しかし、威力が足りなかったのか吹き飛ばす事までは出来なかった。疲れている。
「はあ、はあ、ふぅー。強いな」
大きく息を吐き剣を構え直す。中々手強い。
しかし、ワクワクする。なんかしっかり戦っている感じがする。まだ気持ちに余裕があるのだろう。
次は一撃一撃を真剣に、気合いを入れて。
体勢を立て直したゴブリンは棍棒を振りかざして来る。武器を持ったとしても単調な攻撃だ、避けられる。
左に避ける。
まずは振り下ろし。
「ぐぎゃぁぁぁぁ」
ゴブリンの悲鳴。見事クリーンヒットした攻撃はゴブリンの右腕を半ばから切断する。後はもういける。
ゴブリンは右腕を抑えながらその場で立ち尽くす。抵抗はない。
右半身を前に剣を左に流すように構える。全力の一撃を与えるため、大きく溜める。
「うおぉぉぉぉぉ」
横一線。
全力の一撃は抵抗のないゴブリンの体を半ばから上下に両断する。
出来るとは思わなかった切断が出来た事には歓喜があるが、思っていたより真っ二つはグロい。致命傷、即死の一撃だったのかすぐに光の粒となって消えたのでそこまで引きずる事はないが。
しかし、まあ疲れた。なんというか、精神力を削られた感じだ。会心の一撃と言えばそうかもしれないが、ただ全力を出しただけだ。そこまで疲れるようなことではないと思うが。
「これで3階層もオーケーか。思ってるよりすんなりと行けるものだな」
周りを見渡しながら思う。今回のゴブリンは武器を持っているだけで強いわけではなかった。まあ、これから武器を持っているモンスターが出てくるだろうからそれの予行演習みたいなものだろうな。
「で、今回のドロップアイテムは……球? 黒色? 欠けてるし、なんだろ」
黒色の球体を手に取り見る。すぐにピンと来るのは魔玉だろうか。ドロップで玉と言えばそうだ。こういう素材をエルフが金と交換してくれるのだろう。これは割と換金率が良さそうだ。
ドロップアイテムを拾いポーチに入れる。今まで拾ったアイテムを換金するとどれぐらいになるか楽しみだ。まあ、世間ではそこまで稼げないとの事だからそこまで期待をしない方がいいのだが。
もう一回この階層でレベルを上げて4階層に向かおう。
奥に階段が見える。そのまま階段に向かい歩く。この階層はこの部屋しか無いようだ。
「このまますんなりと5階層も突破して終われればいいんだけどな」
そう思いながら4階層に降りていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます