7話「モンスターとの初接触」-2
「ふぅ、ぎり倒せたな。危なかった」
剣を地面に刺し体重をかけながら一息つく。
周りを見渡してもゴブリンは出てこない雰囲気だ。
「それと、今回も素材は無しか」
素材が出なかった事が少し残念に感じる。
「んー。よし、とにかく1階層は終わらせようか」
そのまま休憩はせずに奥に向かって歩き出す。休憩するなら2階層に入る入り口前でと思ったからだ。
「っと、気合いを入れたんだけどなー」
少し歩いたところ奥の方に赤い光が見える。
見渡したところゴブリンもいない様だ。
「2階層の入り口は階段なのか」
目の前にある下りの階段を眺める。本当に潜る感じのだろう。
「思っているより疲れてるのは確かか。うーん、少し休憩してから降りるか。モンスターも出そうにないしな」
その場に腰を下ろしポーチから水を出す。量が限られているから節約して飲む。
「にしても剣って難しいな。切る行為をしても切れない、切り傷は付けられるけど切り裂けない。難しい」
剣をまじまじ見ながら考える。慣れれば切り裂ける様になるだろうから深くは考えていないが。
「もうそろそろ行きますか」
言いながら立ち上がる。向かうは2階層。そのまま階段を降りていく。
◇
「で、変わらないと」
階段を降りた先も変わらず洞窟内の景色だった。
が、聞こえる音は違う。奥から微かに聞こえる音は獣の鳴き声らしきもの。これはオオカミっぽい。
気を引き締めながら進んでいく。
「グルルルルルルル」
奥から出てきたのは犬の様な狼の様なモンスター。見た目はかなり凶悪だ。
「割と怖いなこいつも。
多分なんとかハウンドっていうんだろな。うーん、ブラックハウンドと呼ぼう」
わかりやすい様に勝手に名前を付ける。
思っているよりも凶悪な顔にびびる。しかし、相手は1対。これはラッキーと思うしかない。戦いやすい。
剣を下段に構える。
まずはゆっくり近づきながら相手の出方を見る。
途端、ブラックハウンドは走り出した。先手を取られたが元々カウンターを狙うつもりだ。自分で動くより当てやすい。それにゴブリンより速いが、そこまで速いスピードではない。ぎりぎり目で追えるレベルだ。
よく見て狙う。逃さない様に。
「っ!」
目の前、後少しで届きそうな時ブラックハウンドは方向転換した。
素早い動きはブラックハウンドを一瞬見失わせた。
「っな! くそ!」
死角に移動したブラックハウンドの横からの攻撃を咄嗟に剣でガードする。ガードするが威力は伝わる。飛び掛かられたまま押し倒される。
「ぐあっ……」
背中に衝撃が走る。
油断はしていたわけではない、ただ動きに慣れていなかっただけだろう。
「ガル、グルル、ガア」
ブラックハウンドが上で暴れ出す。咥えられている形で、口は剣で防げているがピンチだ。
思ったよりもでかい。中型犬より少し大きいか。力も強く腕だけでは振り切れない。
このままだとやられる。
咄嗟に足を胴体に滑り込ませ蹴り上げる。
「ッ、ギャン」
綺麗に決まったことで、ブラックハウンドが後方に飛ぶ。
すぐに立ち上がり剣を構える。
ブラックハウンドはすでにこちらを向いている。ダメージはなさそうだ。
「くそ、死にかけたぞ。まじか、怖え」
今の攻防に冷や汗が流れる。今までしたことなかった命のやり取り。ゴブリン戦では無かった命の危機。一瞬だが行動することに躊躇する。
「ガオォォォゥゥゥゥ」
ブラックハウンドの雄叫び。
そのままブラックハウンドはこっちの様子を伺っている。
咆哮というわけではないのか。まさか、仲間を呼んだ?
やばい、やばい。1体だけでもやばいのに、数体相手は無理だ。
落ち着け、落ち着けよ。まずは他が来るまでにこいつを倒すべきだよな。僕のスピードでは逃げ切れないし。いくしかない。
「はあああああああ」
気合いを入れ叫びながら走り出す。剣は横薙ぎの構え。一撃で仕留めるつもりで。
「ガオウゥゥゥゥゥゥ」
それに応えるようにブラックハウンドも咆哮し向かって来る。
落ち着け。一度あったことは二度食らうな。
思った通り目の前でブラックハウンドが方向転換する。
「らああああああ」
右に転換したブラックハウンドを見定め、剣を振り抜く。
「ギャゥッ」
確実にヒットした横薙ぎはブラックハウンドに大きなダメージを残した。
吹き飛ばされたまま、動かない。光の粒にっていないということはまだ生きてるってことだ。走り出す。
「く、うおおおお」
剣を突き刺す。最後の一撃。
ブラックハウンドはそのまま光の粒となって消えた。
「はあ、はあ、はあ。やばかった」
肩で息をする。ゴブリンの時とは違う、確実に命が危なかった。
「流石にこの経験は怖いわ。一旦落ち着こ……」
「グルルルルルル」
「グァゥゥゥゥゥ」
奥から響く複数の唸り声。
「そうだった、仲間呼ばれてたんだったよな」
背中に伝う冷や汗。
徐々に唸り声は近づいて来る。
「どうする……」
選択肢は決まっている。この距離ならまだ間に合うと思う。
行動は、
「逃げる」
そのまま後ろの元来た道を、入り口に向かい走り出した。
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