三田崎茂について【2】
「ははっ」
全て。すべてがオレの思い通りにうまくいった。
「あははははははっ!」
笑いが止まらない。
若い体が手に入ったのだ。
オレのために死んでくれた孫――慎ちゃんには感謝しかない。これでオレはもう一度、高校生2年生から人生をやり直せる!
三田崎慎吾として!
新たな人生を歩むことができる――ッ!
だが、油断は大敵だ。
特に息子いや、今は父親の
「――おい」
男の声がして。
「なにー?」
オレは思わず、そう返事をしてしまった。
――直樹の声ではなかったのに。
ここから。
ここから、全てが狂ったのだ。
オレの新しい人生の歯車が、狂ったのだ。
§
6月13日の木曜日5時間目の美術の授業中、手指の絵を描いている男子がいた。名前は
とても好きでした。好き好き好きすきすき。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きすきすきすき。すきです。
それなのに。なのに、絵が完成することは終ぞありませんでした。その絵を描いていた男の子が死んでしまったからです。死因は確か――あれ、なんでしたっけ? 忘れてしまいました。わたしは、自分の夢を叶えることが不可能になり、とても悲しい気持ちになりました。でも、その後思いついたんです。この絵を別の誰かに完成されてもらえばいいと。
誰か。だれか、この絵を完成させてくれませんか。お願いです。なんでもします。わたしは、わたしたちは2年B組三田崎慎吾の後継者を探しています。
――三田崎、慎吾?
ああ、すみません。外側はそうでも、中身は男の子じゃなかったんでしたよね。
わたしとしたことが大事な人のお名前を間違えてしまいました。もう一度書きますね。
誰か。だれか、この絵を完成させてくれませんか。お願いです。なんでもします。わたしは、わたしたちは三田崎
さがしもとめています。
ユビ折り ユビ折り 加ヶ谷優壮 @dbilnm
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ユビ折り ユビ折りの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます