寝言

当時私は小学4年生で、中学1年生の兄と一緒の部屋で寝ていました。


「――おい」


兄はよく寝言を言います。

今回も〝それ〟だと思ってしまったんです。

――声も、違かったのに。


「なーに?」


私は面白がって兄の寝言に――兄だと思っていたものの声に、反応してしまいました。もう、取り返しがつきません。


助けてください。

たすけてください。

たすかったと思ったのに。

たすけてください。


兄は今年の春に死んでしまいました。

たすけてください。

あいつが、戻ってきたんです。

たすけてください。

いやだ、私は死にたくない。

たすけてください。


「本当に、それだけですか?」


――え?


皐月さつきさん、何か僕に隠してませんか?」


彼はそう言いました。


「包み隠さず、全てを教えてください。――僕とあなたのためにも」


三田崎慎吾がそう言いました。

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