第12話 【おっ先にぃ~】


 「デラーラじゃないか! デラーラ、どうしたんだい? 」


 マキオはデラーラに向かって、そういいました。

 デラーラは妙(みょう)におちついて、じっとしたまま、マキオを見つめています。


「デラーラ」


 マキオはデラーラにゆっくり近づいていこうとしました。

 すると、デラーラは、マキオをふりきるように、かけだしました。


「デラーラ、まって!」



 マキオは必死においかけました。

 デラーラはしばらくかけると、たちどまってふりかえり、マキオをまっているようなしぐさをしています。


 マキオがおいつこうとすると、またかけだします。


 デラーラのふさふさした毛並みを、どうしてもさわりたい気持ちが、いっぱいにこみあげてきて、マキオはおいかけつづけました。


 おいついて、デラーラにさわろうとすると、デラーラはさっとひるがえって、またかけだすのです。


 そうやって、デラーラを追いかけていくうちに、いつのまにか、目の前にいじめっこのケンヤと自信家のコーイチが、歩いているのが見えてきました。


 二人の横を、風のようにデラーラがおいぬきました。


「おっ先にぃ~」


 と、いって、二人の顔も見ずに、マキオはその横を走りぬけました。



 二人のあぜんとした顔が、目にうかぶようです。

 とうとうデラーラは学校の校門までたどりつき、くぐりぬけていきました。


 そうして、下駄箱のある校舎のなかへ、はいっていきました。

 マキオもゼイゼイ苦しそうにしながら、下駄箱までかけこみました。


 下駄箱には、同じクラスのエミちゃんがいました。


「マキオくん、おはよう。やったね、今日はちこくしなかったじゃない」


「エミちゃん、ここに大きな犬がはいってこなかった? シェパード犬なんだけど」


 マキオは、顔の汗を手でぬぐいながら、エミちゃんの顔をのぞきこみました。


「えっ、見てないよ、でも犬なんかはいってきたら、みんな大さわぎすると思うから、すぐわかるんじゃない? 」


「そうだよね。おかしいなあ~」



 マキオとエミちゃんは、教室まで、いっしょにいきました。

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