第10話 【ゆきじかんの生活】


 とぼとぼ歩いて帰るとちゅうで、マキオはなんども後悔をしていました。


「あんなやくそくを、ケンヤとするんじゃなかった」



 マキオは、あの雪の日いらい、ちこくばかりしています。けっして、家をでる時間が、おそいというわけではないのです。雪の日の前に通っていたときは、いつもその時間にでていて、まにあったのです。


 それなのになぜでしょう。

 マキオは、学校へいくとき、なぜだかゆっくりしか歩けなくなってしまったようです。


 あの雪の日に、ゆっくりと流れる、『ゆきじかん』を発見してからというもの、マキオの身体は、ゆきじかんを頼(たよ)りに、動くようになってしまったのでしょううか? それとも、マキオはいまでも、「ゆきじかん」のなかで生活しているのでしょうか?



***



 朝、マキオは歯をみがきました。

 カガミにうつる、自分の顔をのぞくと、なんというまっ青な顔をしているのでしょう。


 今日はなんだか、自分のことをなんにも考えたくない気持ちです。

 なんであんなやくそくをしてしまったんだろうと、マキオはなんども思います。



 玄関をでると、犬のデラーラが飛びついてきました。バウバウガウガウ。


 マキオはデラーラをギュッとだきしめて、すわりこみました。

 そして、こいつ、というふうに、デラーラの鼻を、二三回、人差し指(ゆび)で、つつきました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る