第9話 【男のやくそく】


「くやしかったら、あしたちこくしないできてみろよ」


「そうだ、そうだ、マキオのチコク虫」


 マキオは本当にしゃくにさわってしょうがありません。


「ああ、きてやろうじゃないか、きてやるよ。あしたはぜったいちこくしないからな」


 そういいきったマキオにむかって、いじめっこのケンヤはまじめな顔つきになり、いいました。


「もし、ちこくしたら、どうするんだ」



 マキオはちょっと考えていましたが、すぐ大きく目をみひらいて、おもいきってこう言いました。


「そのときは、エミちゃんのとなりの席をゆずってやるよ」


 髪のながくて、目の大きなエミちゃんは、やさしくて、勉強もスポーツもがんばる女の子でしたので、クラスの男の子たちのあこがれでした。


「おうし、おとこのやくそくだからな、コーイチがしょうにんだ」


 そういってケンヤは、振り子のようにゆれているブランコの上のコーイチのほうを向いて、目で合図をしました。


「おれが、しょうにんだ」


 波にゆれるブランコから、コーイチはそういうのとどうじに、マキオにむかって、くつをカタッポ飛ばしました。マキオは自分のすぐ横に飛んできたくつがころがる様子を目にして、コーイチをにらみかえしました。


 そして、とつぜんコーイチのくつをひろうと、後ろのへいにふりかえり、学校の校庭に投げこみました。


「このやろう――」



 コーイチの声が聞こえてくるやいなや、マキオはかけだしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る