第8話 【マキオVSケンヤとコーイチ】


 午後三時のチャイムがなると、子供たちは校門から、いっせいに飛びだしていきます。雪がふった日から、七日たちました。


 道にとけのこった雪も、もうほとんどがとけて水になり、水たまりをつくっています。バシュ、バシュ、いきおいよく、何人もの子供たちのくつが、みずたまりをはじくようにして、走りさってゆきます。



 おやつの話。ドッチボウルの話。


 缶けりの話。お誕生日会の話。


 宿題をいっしょにやる話。ゲームセンターにいく話。


 川に魚つりにいく話。沼にザリガニをとりにゆく話。


 ソフトクリームを食べる話。買い物にいく話。



 放課後の子供たちは、教室や校庭を走りまわり、遊ぶ約束をする友達をさがしたり、おいかけたり、輪になってそうだんをしたりしています。


 そんな中で、マキオは、とぼとぼと一人帰ってゆきます。

 肩に力がなく、背が猫背で、下を向いて、いかにも元気がないという感じです。


 校門をでて、左にへい沿いに歩いていくと、ちいさな公園がみえてきます。

 公園の横を通りすぎようとしたとき、公園のなかから、声がしました。


「マキオ、あしたもちこくするんだろう。オカアちゃんにおこしてもらったほうが、いいんじゃねえの」


 マキオは声のしたほうにふり向きました。

 するといじめっこのケンヤが滑り台のテッペンで仁王立ちのポーズで、ニヤニヤしています。


 マキオはムシして、通り過ぎようとしました。

 すると、


「エミちゃんもかわいそうだよな。席がマキオのとなりなんて。

毎日ちこくして先生におこられるたびに、エミちゃんのところまで先生のツバがとんでさ。かわいそうったら、ないや」


 ブーメランのようにゆらめく、ブランコの上から、自信家のコーイチがそう口をはさみました。


 ムシして通りすぎようとしていたマキオでしたが、胸のなかが火のように熱くなってきたのを感じたときには、その場で、二人に大声をあげていました。


「なんだと! もういっぺんいってみろ!!」



 そんなマキオを見て、ケンヤとコーイチは、ますますバカにして、笑いだしました。


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