第7話 【ゆきじかん】


 朝学校へいくとき、マキオはそっと、おそるおそる歩きました。

 昨日の雪が、こおってかたくなり、すべりやすかったからです。


 雪はやみました。

 はいいろの波のような雲が、空にはひろがっています。


 マキオはひとさし、さしあし、すべりあし、というかんじで、歩いてゆきます。


 とても長い時間歩いたような気がするのに、ふりかえると、じゅっぽくらいしか、歩いていないことに、マキオはたびたびおどろきます。



 いっぽ、またいっぽ、歩きながらマキオは考えだしました。

 そして、こう思いはじめるようになったのです。


「ゆきの日は、とてもじかんがゆっくりながれているんだ……だから、ぼくもゆっくりしか歩けないんだ。

ゆきをかぶっているでんしんばしらや車だって、なんだかまだねむっているみたいだし、じかんがゆっくりだから、おきてこないや。

――でも、デラーラなら、どうかなあ。あいつなら、はやく走れたりするかな……」


 ゴツ、ゴツと大きなクッキーのようなかたい雪をふみしめて、しずかに歩きます。

 ザク、ザクと、いちめんの雪にあしあとをのこしてゆきます。



「ゆきじかん……」


 ふいとマキオの口から、こんな言葉がでてきました。


 晴れた日のさんばいはかかる雪の道。


 雪がつもったあとの、ゆっくりとした時間のことを、マキオはそう呼ぶことにしました。

 


 この日もマキオは学校にちこくしました。

 クラスのみんなも、半分くらいは、ちこくしました。

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