第6話 【エミちゃんの声】


 しばらくすると、黒板にもう書くところがなくなってしまったので、先生が、黒板消しをつかみ、消そうとしかけました。


 その時、突然先生は、右手に持っていた黒板消しを、ガツンと黒板にたたきつけ、

 

「マキオ、おきろ!」


 とどなりました。



 それでもマキオは、完全にじゅくすいしてしまっていて、おきませんでした。

 先生はきぜんとした態度でツカツカと、窓ぎわの後ろの方のマキオの席まで歩いていきました。そして、マキオの片腕をつかみあげました。


 めがねをかけた、やせた男の先生でしたが、とても力がありました。


 マキオはとつぜん、誰かがぶつかってきたようなしょうげきをかんじたので、目がさめました。自分の腕を先生につかまれていることを、考えるひまもありませんでした。


 ただ、先生のこわい目を見ると、たたかれる、と思いました。

 そして、目をつぶるしかありませんでした。


「マキオ! あまったれるな! 」


 どなり声とともに、先生の手があがりました。



 そのとき、


「こどもをブツ人は、わるい人だって、お母さんがいってました! 」


 マキオのすぐそばから、女の子の、さけび声が聞こえました。

 それは、エミちゃんの声でした。


 ゆっくりと、先生はつかんでいたマキオの腕をはなしました。



 空をあおいだマキオの頬(ほほ)に、ポタリポタリと、また雪がふりだしました。……

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