第4話 【デラーラと風になって】
お母さんから小銭をもらうと、マキオは家をとびだしました。
いそいでかけだそうとするマキオに向かって、玄関の横の犬小屋のからとびだしてきたデラーラが、ほえたてました。マキオはデラーラもつれていくことにしました。
いつのまにか、ふたりはきそうように、並んで走っていました。
暗い夜道を右に曲がったり、左の小路をえらんだりしながら、かけぬけていきました。まっすぐな一本路のところで、ふいとデラーラが、走っているマキオのすぐまえにとびだしてきました。
夜のくらやみのなかで、デラーラの白い背なかが浮かび上がっています。
マキオは、息がゼイゼイあらくなってきて、ゆっくりしか走れなくなってきました。そして、なんだか頭がボウッとしてきました。
そのとき、デラーラの背なかの白い毛なみが、マキオにどんどん近づいてくるのをかんじました。マキオは、まるですいこまれるように、デラーラの背なかにしがみつきました。
デラーラの毛のなかに顔をうずめながら、マキオはデラーラのにおいをかぎました。いつもかいでいるにおいなのに、そのときのにおいは、いつもよりもずっといいにおいだと思いました。
デラーラのはずむ呼吸や、かける足音が、マキオの胸のなかに大きくひびいてきました。いままでに見たことのないようなスピードで、デラーラはマキオをのせてかけつづけていきました。
マキオはこわくて、デラーラの毛のなかから、顔をあげることができませんでした。そのうちにだんだんと、やきいも屋さんの声が大きくなってきました。
マキオは顔をうずめたまま、まるでデラーラといっしょに、風になっているような、そんな気持ちでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます