第3話 【やきいも屋さん】


 マキオは秋にデラーラの背なかにのって、いしやきいも屋さんの車をおいかけたことがありました。


 あのときの、デラーラといっしょにおいかけてる、という気持ちににていると、マキオは思いました。



***



 しずかな秋の夜でした。


 マキオは台所のテーブルについて、ミートスパゲティを食べていました。

 フォークをくるくると回しながら、白い皿の上にもられたスパゲティにからませるのですが、しっぱいばかりしています。


 それで、マキオはすねるような顔をして、フォークをおいてしまいました。

 マキオが足をぶらぶらとさせながら、スパゲティをのこそうかどうかと、まよっていると、


「いしや~きいも~ォ。や~きいたて~ェ」


 と、外からいしやきいも屋さんの声が聞こえてきました。


「もう、やきいも屋さんのきせつなんだねえ。夏が終わったものとばかり思っていたら」


 向かいで食べていたマキオのお母さんが、言いました。


「や・き・い・も屋さんだ! 」


 つづけてマキオが声をあげました。


「ほっかほっかの、おいもだよ~はやくしないといっちゃうよ~」


 

 すこしずつ、とおのいていく声に、耳をすませながら、マキオはじれったい気持ちでいっぱいになりました。


「やきいも屋さん。はやくしないと、いっちゃうよォ!」


「おやおや、マキオ。やきいも食べたいのかい。それはいいけど、ちゃんとのこさず食べてからね」


 お母さんがそう言うのとどうじに、マキオはフォークをつかみ、白い皿のなかに、顔をうずめました。


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