第2話 【鳴く雪の道】


 玄関をでると、犬のデラーラが飛びついてきました。

 せんぷうきの羽根のようにしっぽを回して、バウバウガウガウ。


 シェパード犬なので、すこぶる体格がいいから困ったもの。


 デラーラに抱きつかれたときは、まるで、コニシキにうっちゃられて、どひょうぎわにおいつめられたタカノハナのような気分だ、とマキオは昨日のテレビで見た一番を思いだしました。



 雪がふっています。


 はしゃぎまわるデラーラからはなれて、マキオはそのことにようやく気がつきました。庭も、木も、家のやねも、道も、みんな真っ白です。



雪をふむ。いっぽ。雪をふむ。にほ。すべる。


雪をふむ。さんぼ。雪をふむ。よんほ。よろける。


雪をふむ。ごほ。たじろぐ。雪をふむ。ろっぽ。


雪をふむ。ななほ。コロンだ!



***



 マキオは学校にちこくしました。


 みんなも学校におくれてきました。

 授業のはじまるのもおくれました。


 それで、先生のむずかしい話も、ときあかせっこない、算数の割り算も、黒板にチョークのぶつかる音も、どれもかんたんで手みじかにすみました。



 今日は午前中授業だそうです。


 ケイタイをもっている子は、いちはやく家へかけて、車でむかえにきてと、せがんでいます。マキオもケイタイはもっていましたが、家へはかけませんでした。


 マキオは雪道が好きです。


 いつもとはちがったまっ白い道。

 歩くと雪がキュッ、キュッと鳴いて、ふしぎな気持ちになります。


頬(ほほ)も、手足の先も冷たいのに、なぜか胸の中ははずんで、あたたかいのです。


「うそォ、ゆきだるまがゴジュッコはつくれてしまうぞ」


 そう言いながら、校門からでてきたマキオは、雪の中に立ち止まりました。



 はいいろの空。


 ふかいふかい雪の道。



 マキオは、まいごのうさぎのようにぴょんぴょんはねては、白い雪のなかに足をとられて、まえにつんのめります。ひざまであるかたっぽのブルーのながぐつに、ひょいと雪がはいりこみ、せすじがさむくなりました。



 こんどはそっと歩いてみます。

 ゆっくり、いっぽずつ、雪をふみしめるかんしょくをかんじながら。


 これがけっこうきもちいいのです。

 ころばずにすむし、なによりも雪といっしょに歩いている気がします。

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