第2話 ゲーマー冒険者ギルドへ行く
次の日、俺は家の庭に出て昨日書斎で習得した基本魔法を早速実験してみることにした。あくまで日常で使える程度の魔法だから威力は正直全く期待していない。
試しに俺は掌を突き出し、攻撃初期魔法唱えてみた。
「ファイア!」
そう叫んだ瞬間俺の体全体に何かが流れる感覚と俺の掌にその何かが集まってくる感覚があった。その刹那俺の掌ほどの炎が出現した。実験成功だ。
この世界に来て分かったことが一つ増えた。それは魔法系の詠唱についてだ。
この世界では魔法系には詠唱というものが存在し、口上と呼んでもいいほど長いのだ。だが俺はその詠唱をすっ飛ばして魔法を使うことができた。その効果は絶大だった。なんせ俺以外に詠唱破棄できたのは伝説に出てくる勇者くらいだったからだ。
このことはあんまり人に教えるべきではないと肝に銘じておいた。騒ぎになる気しかしないからだ。
その後も俺は基本魔法を全部使ってみたのだが魔力がなくなっていく感じがない。
ラノベとかでよくある魔法を使いすぎると気持ち悪くなって立てなくなったりする系が全く起きないのだ。ステータス画面にも魔力は載っていないし、、
一応魔力の測定は専用の魔道具か、スキル探索眼で見ることができるのだが、今の俺にはどちらとも有していないので一度魔力についてはおいておくことにした。深追いしても手に入れる手段は今のところないしな。
俺は一通り魔法を撃った後、自分の部屋に戻った。戻って状況を整理しようと思ったからだ。
今の状況を俺なりにまとめてみると、
・俺は攻、防、回、バフ、全の全てを詠唱破棄して扱うことができる。
・魔力は基本魔法程度では魔力切れを起こさないくらいにはある。
・魔力の流れは魔法を発動する部位によってその場所に集中して供給される。
とこんなものだろう。
他の人から見れば大したことがない情報でも俺には値千金の情報なのだ。
俺はこの世界に来てまだ5年だからもっと多くの情報を手に入れたい。
手っ取り早く情報を集められる場所を俺は一つ思いついたのだが、親がなんていうかわからないので俺は両親と相談することにした。
・・・少し経って俺は両親に話を切り出していた。
『どうしたんだ話って?』
「実は俺、冒険者ギルドに行ってみたいんだ』
その言葉に両親はかなり驚いていた。無理も無いだろうなぜなら、まだ5歳の息子が危険が付き纏う冒険者ギルドに行きたいなどと言い出したのだから。
だけど両親は、俺の意見に賛成してくれた。なんせ両親もまた小さい頃に冒険者になりたいと親に縋り付いて一晩中言っていたらしい。親が少しかわいそう、、
『血は争えない、、か』
『いいぞロイお前が行きたいところがあるなら父さんたちはもう止めないからどこでも自分の行きたいところに行っていいぞ!』
と、父さんたちからまさかのokサインが出たのだ。俺はウキウキで両親の部屋を後にし、明日冒険者ギルドへ行ってみようとすごく張り切っていた。
翌日、俺は興奮で早く起きてしまった。
いくらワルクロで親の顔より見たと言っても、実際自分の目で実物を見るのは訳が違うのだ。その興奮を隠し切るのはいくら元高校生の俺からしても抑え難いものだった。
俺は朝ごはんを食べ終えるとすぐに鞄を背負って冒険者ギルドへ向かった。
カバンの中には水と地図が入っている。余計なものを入れると重くなって帰りとか大変だしね。
どうやらこの世界はワルクロとなんら街の形は変わっていないそうだ。俺は前この街、アスリアルに来たことがある。その時の記憶を辿ってもこの街と差異はない。
つまり元々俺の拠点があった王都も変わってはいないのだろう。そう思うと王都に少し戻りたくなってしまった。ホームシックみたいなやつだと思う。
そんなこんなで、冒険者ギルドに到着した。ここはたくさんの冒険者がいるので情報収集にはうってつけの場所なのだ。俺も王都のギルドでよくモンスターや、街の流通の情報とかよく漁ってたな、なんて考えていると俺はあるものが目に留まった。
ボロボロの服に、首には大きな首輪が付けられている。見た目は俺と同じくらいの少女で金色のロングヘアーに赤色の瞳、唯一他の人と違うところを挙げるとすれば、彼女には猫耳が頭の上に生えていた。そう彼女は猫の獣人だったのだ。
日本では到底許されないはずの奴隷がこの世界には存在していたのだ、獣人は希少価値が高く個体数が少ないので奴隷としては高額で取引されているらしい。
確かにワルクロにも奴隷制度は存在した。だが俺は奴隷なんて可哀想なことやめればいいのにと思っていた派閥の人間だったため、奴隷は買わなかった。
そこで俺はいても経ってもいられなくなり、その奴隷の女の子を連れた商人らしき人物に声をかけた。
「あのーすみません。この獣人の女の子の値段っていくら?」
『おっ、坊ちゃんお目が高い、この獣人は訳ありでね特別に金貨5枚でいいよ』
この世界の貨幣は、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨とあり、日本円に換算すると、、
鉄貨 1000円
銅貨 10000円
銀貨 100000円(10万)
金貨 1000000円(100万)となっている。
通常奴隷は安くても金貨10枚、高いやつなら金貨300枚は下らない。
(金貨五枚、、安すぎるな何か裏があるのか?)
「なんでそんなに安いのか聞いてもいいかい?」
『あぁ、もちろん。理由はこいつが不治の病に侵されているからさ。こいつの病気はそこら辺の初級中級程度の魔法じゃ治らねえ、上級回復魔法の、
理由を聞いて、可哀想という気持ちが抑えられなくなった俺は、両親から、毎年金貨一枚をもらっていたので、5年分のお小遣いの金貨五枚を商人に渡した。
『毎度あり、じゃあ主従契約するから手を出してくれ』
そう言われ、俺の手と、奴隷の女の子の手を合わせ、何やら唱え始めた。
『この契約は我が名、ベリオス・カイザックの名においてこの奴隷の主人をロイに変更する。』そう唱え終わると俺と奴隷の少女との間に、白い光が現れた。
光が晴れると、店主が奴隷契約の儀式は終わったぞ、と言ってくれていたので俺はお礼を済ませて、その場を後にした。
俺は、冒険者ギルドの情報より、この奴隷の女の子と一緒に俺の家へ向かっていた。
「そういえば君の名前は?」
『あ、えっと、、私名前ないんです、、よろしければ私の名前をつけてくれませんか?』
「まじか、名前がないのは不便だしな、、」
とふと彼女の方を見ると彼女の金色の髪がふわっと風で
「そうだ君の名前はサナにしよう。」
『サナ、サナ、、とってもいい名前です!ありがとうございます。えぇと、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?』
「あぁ、ごめん俺の名前はロイ・アスリアル。このアスリアル領の領主の息子だよ。」
『ここ領主様のご子息様!?
あぁっぁ、あ、改めてよろしくお願いし、しましゅ!ロイ様』
俺が領主と知ってとても驚いている様子だ、言葉も噛み噛みだったので相当動揺しているのだろう。可愛いなこいつ。
そんなことよりもうすぐ屋敷に着く頃だ。両親にサナのことを紹介しなければ。
「父さん、母さん、ただいま」
『おかえり、ってその後ろの子は?獣人の女の子みたいだけど、、』
「この子はサナ、俺が奴隷だったところを買い取ってきた」
その唐突な状況に両親は言葉を失っていた。冒険者ギルドに行くというだけでも心配だったのに、まさか自分達の息子が奴隷を連れて帰ってくるとは思わないだろう。
「だが俺はこの子に重労働を課したり、彼女の嫌がるようなことはしない。だから彼女を俺の側付にさせてくれないかな?」
両親はしばらく考えてから、
『わかった。彼女をお前の側付きにしよう。サナちゃん、この子は好奇心が旺盛で危険なこととかを顧みないでやっちゃう癖があるからしっかり見張ってほしい』
『は、はぃ!もちろん命に変えてもロイ様をお守りいたします!』
とこんなことがあって正式にサナが俺の側付きになった。俺のお財布は寂しく待ってしまったが、サナという俺が守るべき人も増えた。これからもっと楽しくなりそうだ。
サナは、元々家事が得意だったらしく、屋敷の家事をお手伝いさんと分担しながらやっていて、その腕はピカイチだった。俺と年齢が同じなのにすごいと思う。
それに比べて俺は、、高校に持っていくお弁当とか夜食はたまに自分で作っていたので料理はできる。けど掃除のことは聞かないでくれ。
おっと忘れるところだった。彼女の病気は俺が書斎をあさっていた時に偶然見つけた上級回復魔法全書とかいう売ったら数十億は下らないであろう魔法書を速読し、皇帝の光を使って直しておいた。なんでこんなヤバいものが俺の家の書斎にあったかは、知る由もないのである。ほんとに貪欲ってぶっ壊れだと思う。
そんな騒がしい出会いがあり、楽しい時間はあっという間に過ぎて、サナと出会ってから実に2年が経過した。
俺は7歳になりいよいよ、学校へ行かなければならなかった。でも俺は勉強は嫌いではなかったし、学校に行くのは好きだったので、ようやく学校に行ける日が来たと内心ウキウキなのだ。
俺が行く学校は王都ロザリア魔法専門学校で王都の真ん中あたりにある学校で、そこには側付きが必須だ。絶対サナを連れて行こう。
なんせ300年以上の歴史がある名門校なのだ。実際、ワルクロの設定にもこの学校があり、王都時代俺もそこの教員に一時期お世話になったことがある。懐かしいなぁと思う俺であったが焦らなくてはならないだろう。
実技と学力の試験は明日まで迫った俺は高校受験以来の緊張感を胸に、最後まで試験勉強をしていた。ゲーム時代は、実技で満点を叩き出したので、学力は免除となったが、今回はそううまく行かないだろう。だから過去問がない中でも独学で勉強に勤しむしかないのだ。
サナから側付きとして学園へ行くことへの了承は貰っていたので、明日早速試験を受けるだけなのだ。
試験は実技、学力の順に行われ、実技が一定の範囲を超えると学力が免除されるシステムだ。俺は今回も実技が満点であるように願いながら明日に備え、素早く眠りにつくのだった。
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